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アダルトビデオの向こう側
【熟女/人妻 官能小説】

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0.プロローグ-2

 彩友美と将太は木陰に置かれた木のベンチの一つに並んで腰を下ろした。5月の暖かく柔らかな風がゆっくりと通り過ぎて、茂った木の葉をさざめかせた。
「世話になった、って?」
 将太は笑いをこらえながら言った。「悪さして父ちゃんに叱られた時に、この木の幹を蹴飛ばしてうさばらしとか」
 彩友美は吹き出した。「やだ、ひどい」
「じいちゃんと一緒にはしご掛けてあの枝まで登ったこともあったな」
 将太は箒のように広がる枝の一本を指さした。
「思ったより高くてさ、俺、脚が震えてたけど、じいちゃんの前では平然としてたよ」
「幾つの時?」
「高一」
「え? もうちっちゃな子供じゃないじゃない」
 将太はうつむいて小さくため息をついた。「じいちゃんは、」
 そして再び顔を上げてその枝の先で風にそよぐ瑞々しい緑をたたえた葉に目を向けた。「俺に強くなれ、って言いたかったんだと思うよ」
「強く?」
 将太は彩友美に目を向け直した。
「父ちゃんが死んだ翌日だったよ」
 彩友美ははっとして口をつぐんだ。

 将太は左手でそっと彩友美の肩を抱いて、遠い目をしながら言った。
「でも俺、強くはなれなかった。彩友美にも迷惑掛けたよね、あの頃……」
 彩友美は切なげな目をして、その弱冠二十歳の夫の横顔を見つめた。
「君がいなかったら、俺、今頃どんな人間になってたかわからない。感謝してるよ」
「あなたにはおじいちゃんの意思が伝わってたと思うわ」
 将太は無言で彩友美を見た。
「孫のあなたにこの木のように強くなれ、っていう意思。高校時代の将太君は本物のワルにはなれてなかったでしょ?」
「そうかな……」

 彩友美は躊躇いがちに言った。
「今でもお母さんのこと、恨んでる?」
「いや、」
 将太は彩友美の肩から手を離し、自分の膝に乗せた。
「それも運命だったんだ、って思えるようになったよ」
「そう?」
「いや、運命というより成り行きかな……」
「成り行き……」
「母ちゃんには母ちゃんなりの考えがあったんだろうから」
「将ちゃん……」

 将太は彩友美の手を取り、自分の膝に乗せさせた。
「彩友美のお陰だよ。何もかも」将太はまた彩友美の目を見つめ、にっこり笑った。「ほんとにありがとう。俺を救ってくれて」
 彩友美は頬を赤くして照れたように微笑んだ。

 将太は身体を後ろにそらし、その巨木を見上げながら言った。
「俺さ、この木の葉っぱが風にざわめく音が好きなんだ」
「そうなの?」
「ほら、ちょっと波の音に似ているじゃん」
「将ちゃん海、好きだもんね」
「ちっちゃい頃にさ、母ちゃんとよく海岸を散歩した」
「どこの海岸?」
「母ちゃんの実家が海のそばでさ、俺もそこで生まれたって聞いた」
「そう。だから海が好きなのね」
「この音は、俺の身体の中に染みついてる音に似ているんだろうね」
 将太は穏やかな笑顔を彩友美に向けた。
「だから癒やされるんだ、とっても」
 彩友美も瞳を閉じ、ケヤキの木の葉がそよ風にさざめく音に耳を傾けた。

「それはそうと、」
 将太が不意に言って、彩友美は思わず目を開いた。
「彩友美、最近食欲がないみたいだけど」
「うん。そうなの。このところあんまり食が進まない」
「どっか悪いんじゃないの? 医者に診てもらったら?」
 将太は心配そうに彩友美の顔を覗き込んだ。
「そんな大したことはないと思うけどね」彩友美は笑った。
「明日、病院に連れて行ってあげるよ。念のため」
「そうね。マルモン・クリニックに行って診てもらおうかな。久しぶりに和代先生にも会いたいし。心配してくれてありがとう、将ちゃん」
「当然だろ」
 将太は彩友美の身体に手を回して自分の方に引き寄せた。


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