電話-2
それから5日後。
ちづるは、5日前の電話で隆史と
会う約束をしていた。
電話では会う日にちと、時間だけを
決めていた。
その後はメールでやりとりをする。
会う場所について、ちづるは
【家で会うのは嫌だから、
レストランは?】
と隆史に言ったが、隆史は
【2人だけになれる場所がいい。】
と言ってきた。
【じゃあ、カラオケ店でいい?】
と送ると、分かった、と返事がくる。
T駅の南口にある、
最近出来たばかりのカラオケ店で
会う事になった。
夕方5時。
2人はカラオケ店の前で
待ち合わせをした。
ちづるのが、早くに到着する。
カラオケ店の入っている
雑居ビルの前に立つと
スマホで時間を確認する。
ぼんやりと夕焼けを眺めた後、
次第に心が落ち着かなくなる。
人混みを眺めて隆史を探す。
「、 、 、、。」
隆史と会うの
どれぐらいぶりだろう
「 ぁ 。」
きた
スーツ姿の隆史が、こちらに
向かって歩いてくる。
ちづるに気がつくと軽く右手を挙げる。
ちづるの前に来ると
こう言った。
「、、あれ?
また背ー、縮んだ?」
「、 、 、ふふっ、」
今からカラオケ店に入り隆史と
話をする。
きっと、楽しい話ではないだろう。
嫌な雰囲気を作り出さないように
隆史はわざとそう言った。
ちづるは、
隆史の昔と変わらない
相変わらずな態度に、
思わず笑った。
2人はカラオケ店に入った。
受付を済ませ、部屋に入る。
隣同士に座ったが、ちづるは
隆史と距離を置いて座った。
隆史は、グレーのコートと
スーツの上着を脱ぐと、
それを部屋のハンガーにかけた。
ピンクのワイシャツ。
薄いグリーンのネクタイ。
ドサッと座ると、言葉を探す。
「、 、 、 、。」
「、 、 、 、、。」
「 じゃーー、歌う?」
「ぇ? ふふっ、、
歌わない。」
「ですよねぇ。
あ、吸っていい?」
「 え? 、、うん。」
隆史は返事を聞く前に、
仕事用の鞄から煙草を取り出すと
それに火をつける。
ちづるは、
煙草の箱を眺め、
その後に隆史を見る。
昔と変わらない煙草の吸い方。
煙を見つめる細い目。
少しだけ懐かしい気持ちが甦る。
ちづるが言う。
「、、、元気だった?」
「まぁ、ね。
お前は ?」
「 ん、。 元気だったよ。」
「そう。」
「、 で? 話って?」
「 あ?」
「話したいって、言ってたじゃん。」
「あー。」
「、 、 、、 、。」
隆史は灰皿に灰を落としながら喋る。
「お前ってさ、」
「 ん?」
「どこまで知ってんの?」
「 ? 何を?」
「俺の事。」
「 ?
付き合ってる人がいる事?」
「あぁ、、。
ぁーー、やっぱ、、
知ってたんだ。」
「、、うん。」
「 で?
どー思ったの?」
「、、どーって、、 、。
んーー、、
ぇ? どーって言われても、」
「いつから付き合ってるのか
とか、知ってんの?」
「んーん、、
それは、、知らない。」
「ふーーん。
じゃあ、言った方がいい?」
「 え?
んーー、、
そう、、だね、。
本人から聞く方が確実、だよね。」
「、 、 、、。
お前 さぁ、」
「 ? 」
「、 、 、、
ぁーー、いいや。
後で言うわ。
んーと、ね?
俺がその子と出会ったのは、、」
隆史の今、付き合ってる子との
話が始まった。
淡々と話をする。
ちづるは、
黙って隆史の話を聞いていた。