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君が泣かないためならば
【女性向け 官能小説】

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早々にお会計を済ませて啓に送ってもらい、部屋に入ってお水をもらう。

「ねぇ。啓?」
「ん?」
「泊ってく?」

私のそんな問いかけに、ものすごく自然に。
一瞬も考えず
「いや。帰るよ」
と、私が飲み終わったグラスを受け取った。

「泊って行けばいいじゃん」
「まだ電車あるしな」

そうじゃないんだって。

「エッチがしたいって言ってんの!」

しまった。
そう思った時はもう言葉が口から出ていた。

「え?」

聞き返さないでよ。
これでも恥ずかしいんだから。

「啓とエッチがしたいの。泊って行って」

ベッドに座って啓に向かって伸ばした私の手を
啓はじっと見つめてゆっくりと口を開いた。

「本気にするぞ」
「本気にしてよ」

「後悔してほしくない」
「しないよ」

私は啓に手を伸ばし続ける。

「重田さんを完全に忘れるまで待てるから」

それなのに私の伸ばした手を取って、手首の内側にキスをする。
その行為が何とも優しくいやらしかった。

「忘れさせてよ―――啓が」

その言葉を聞き終わらないうちに
私はグンッと手を引かれ
気がつけば啓の腕の中にいた。



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