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MOTHER 『僕』
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MOTHER 『あの子』-1

『ねぇ あなた 今日昼間ね』
仕事から帰り 背広を預けるなり 待ちきれない様に妻は畳み掛けた。

『高校生ぐらいかしら?ううん もっと幼い感じもしたけど。うちの前で倒れちゃってね』
『おぃおぃ 大丈夫だったのか?真っ昼間っから学校も行かずに… どこの学校の子だ?』
『あらやだ 私ったら名前すら知らないわ』
『名前も知らない奴をうちにあげたのか?』

半ばあきれ顔になる。
『ごめんなさい。具合悪そうだったし。悪い子には見えなかったし。もしかしたらあなたの教え子かもしれないじゃない。』
『まさか。俺の学校はここから一時間もかかるんだぞ。』
メッと妻へ顔をしかめる。『ごめんなさいって!でも学区外の子かもしれないし、そうじゃなくても心配だったから』
しょぼんとした妻にため息を付き少し落ち着いた口調で話す。
『具合悪く見せ掛けてるだけでお前が襲われたりでもしたら…』
さえぎるような速さで妻は断言した。

『いやあね 女の子よ』

ドクッ

『…あなた?』

嫌な予感が走った。あれからずっと俺が背負っていた罪の十字架。

『大丈夫?顔色、悪いわよ?』
心配そうに俺を覗き込む愛しい妻の顔。
『大丈夫だよ。女の子なんてゆうから最近物騒だし 何か事件がらみかと思ってびっくりしただけだよ』
『やあだ 大袈裟ね』
ケラケラと笑いながらキッチンへ消えていく。
そういえば彼女 最近学校に来ていない。まさか?!――――――――いや…

遅い食卓を二人きりで囲みワインを飲みながら俺は落ち着きを取り戻す。
妻は俺の向かいに座り ワインで微酔いになりながらも寝室で眠る息子を起こさぬように小声で再び話を続ける。

『それでね 私ね ピンときたの。』
ワインを飲みながら上目使いで妻を見る。
『何?』
好奇心旺盛な子供が宝物の地図を解読出来たかのように目を輝かせ 少し前のめりになり続ける。
『多分…多分よ。あの子、何も話さなかったから何の確信もないんだけど。』

もじもじ うずうずと俺のリアクションを待ってる。子供の様で可愛いなんて言ったら怒られるかな。
ふっと笑ってから今一番欲しがっている応えをする。『何 何?』
妻はにこっと笑うと言い放った。

『あの子ね 多分 妊娠してると思うの!』

ガチャン!

『あなた?!』
思わずグラスを落としてしまった。
心当たりが…少なからず俺にはあったからだ。

『どうしたの?やだ シミになっちゃうじゃない』

慌てて俺のワイシャツやらテーブルやらを拭く。


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