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MOTHER 『僕』
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MOTHER 『僕』-1

『僕』という意識が覚醒された日。気が付くと妙に安らげ 妙に居心地の悪い波のなかに僕は居た。
日を追う毎に僕の意識は鮮明になり 自分の本当の居場所へ辿り着く道筋を探しはじめた。
暗がりのなか 手探りで 何度も 何度も厚い壁を叩きながら出口を探す。
そのたび どこか物悲しく それでいてどこか優しい音が僕の耳に届いた。
『この音はなんだろう?』聴いている僕は訳もなく泣きたくなる。
ただ悲しいだけでなくどこか温かくなり 嬉しくなるような そんな不安定な気持ちになる。
そんな時 出口を探すのを諦めると 今度はただただ悲しくて空っぽで 絶望を感じさせる音が聞こえだす。
僕はなんとなく。なんとなくだけれど その『音』の意味を解せるようになった。
その音は僕の『母』なる人の音であること。
その『母』の中に僕はいるんだということ。
そして僕はその『母』なる人には会えないんだということ。
『母』の音は日毎大きくなり 僕に何度も同じ音を聴かせる。
その音はやがて『ごめんね』と響くようになり その頃にはもう悲しみの音しか届かないようになった。
時折『母』でない音も聞こえる。
その音は皆違う低さで 明らかな敵意をもって同じ音をだす。
『オロセ』『オロセ』『オロセ』『コロセ』?
その音が聞こえるたび 僕は更に居心地の悪い波に大きく揺さ振られた。

運命の日 まだ僕の身体は不完全なまま。
荒波立つ液体の中 僕は 僕は 僕は―――――― 冷たい金属がねじ込まれ肌に触り掻き出され ゆっくりと通るはずだった道程を凄い速さで引きずり出された。
うるさかった波・音。
一瞬音は消え 僕の未だ未完成の眼に眩しい光。そして――――――――――
『お か あ さ ん』


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