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【痴漢/痴女 官能小説】

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星司の帰国。そして…-1

【星司の帰国。そして…】

陽子に連絡を入れた翌日の早朝、星司は留学先から帰着した。一睡もできなかった陽子は星司の帰宅を雰囲気で察したが、当主を差し置いて出迎えることは憚れた。

星司は突然の帰着に驚く使用人たちを制して、そのまま当主である陽司の執務室に向かった。陽子以外、陽司にも星司からは帰国の連絡は一切入れてはいない。しかし、早朝にもかかわらず、陽司は各務家の当主らしく身支度を整えて星司の帰着を出迎えた。

「ただいま戻って参りました」

畏まった星司は各務家の当主に頭を下げた。

「元気そうだな」

「お父さんもお変わりなく」

1年半ぶりにしては素っ気ない会話だが、この親子の間では感情を表に出すことは少ない。しかし、次に出た陽司の言葉は少し怒気が含まれていた。

「朝くらいはゆっくりさせろ。それに文明開化前でもあるまいし、帰国の日時くらい連絡入れたらどうだ」

この陽司の言葉には特別な意味合いも含まれていた。

各務家の血筋は概ね2つの能力を代々引き継いでいた。直感的能力と情報統制能力だ。どちらもバランスよく引き継ぐ者も居れば、どちらかの能力が極端に突出する者も居た。

各務家の双子に当てはめれば、星司は直感的能力に長け、陽子の情報統制能力は抜きん出ていた。しかし、一方が長けた分、他方の能力の芽生えは少ない。

当主の陽司は、双子たちのような極端な能力の偏りは無かったが、それでも情報統制能力が長けた分、直感的能力はやや劣っていた。それによって星司の帰国を陽司は予知をしておらず、前日の夜に先代の月司から聞かされて初めてわかったのだ。

直感的能力が強くなれば、他者の予知を阻む力も強くなる。陽司の『帰国日時を知らせろ』の発言は、星司の能力の強さを当主が認めたという証左になった。

「もう、じいさんにもゆっくりさせてやれ」

続いて出た当主の戯れ言のような言いように、星司は苦笑いで応えた。

実際のところ、連日、星司のことに【気】を廻らせていた月司は体力的に少し参っていた。星司の帰国がわかると、ほっとした分、一気に疲れが出てしまったのか、この場に姿を現していなかった。

世代交代が早い各務家において、まだ初老の域をでない月司といっても、能力を使い続けると、その分、体に負担を掛かかる。

「そんなに疲れるまで、【気】を探らなくてもいいじゃないですか」

疲れを見せる先代を気遣い、前夜に月司に掛けた陽司の言葉だったが、その陽司にも月司の焦る気持ちは理解していた。

「星司の行動が読めなくなってきた」

初めて月司がそれを打ち明けたのは1年前のことだった。それを聞いて思い付くのが、星司の能力の飛躍的向上だった。各務家にとっては喜ばしいことだが、月司はそれを喜んでいなかった。陽司は月司と交わした1年前のやり取りを思い浮かべた。

「星司の力が強まっている?」

「そうだ」

「それは心強いというべきか…」

「心の成長と合わせてならば大歓迎だ。しかし、心が未成熟な状態での能力だけの向上は歪で脆い。俺には星司が今、精神的にどんな状態であるかはわからない」

各務家の環境から距離を置き、星司の精神のバランスを保たせるために認めた留学だったが、それが月司たちの予想とは違う方向に向かっていた。

「先代の能力をもってしても、読めないのですか?」

各務家の当主の能力は不思議と時代に則った能力を授かることが多い。バブル崩壊後に必要とされることを見越したかのように、現当主の陽司は情報統制能力が長けて生を受けていたが、先代の月司は違った。月司は戦後の高度成長期に必要とされたかのように、直感的能力に長けて生を受けていて、さらに経験によって磨かれた能力は、ここ数代の中では抜きんでていると言われていた。その月司には血の繋がる身内の行動ならば、距離が離れていても大凡は理解できるはずだった。

「いや、読ませない」

「まさか…」

「その『まさか』だ。今の星司の能力は俺よりも遥かに高くなっている。歴代の血筋の中でもピカイチだろうな。まさしく【卓越した者】だ」

その自嘲気味の言葉で、月司の心配が陽司にも理解ができた。陽司は旅立つ前の星司の落ち込んだ様子を思い浮かべた。



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