う-8
「麻子。俺があと数年後には収入を約束できなくなるとか
もうすぐUKに転勤するとか、
遠距離恋愛が出来ない男だとか・・・
色々な条件をもう一度きちんと考えたうえで答えを出してほしい。
麻子に後悔はしてほしくない。
それでも、それでもやっぱり。俺は麻子が欲しい」
麻子が欲しい。
それは初めてウチに吉野さんが来た時に
私に言ったその言葉だ。
私はその素直な言葉に何もかも吉野さんに預けたくなる。
「うん。私も。吉野さんが欲しい」
私だって、吉野さんが欲しい。
その気持ちを分かってほしくてギュッと抱きついた。
「ねぇ!」
急に思い出して大きな声を出した私に
「ん?」
と呑気に返事をする。
「私がハンティングされた喫茶店!あそこにいたのは?本当に偶然なの?」
そう聞く私に、ニヤッと笑いかける。
「会社の前で麻子が声をかけられた時から着いて行った」
「・・・・」
「あの男は本当にスカウトとして有名なんだよ」
「そうなんだ・・・」
「万が一誰かに見られたら本当にクビだぞ。
何かあった時に助けられるように着いて行った」
「・・・・うん。ありがとう」
「あんな理由で麻子を逃がすかよ」
そう言って、顎を軽く上げて。
例の笑いで私を見つめた。