始-5
次の日から。
プロジェクトで会っても、私は目を合わせることは出来なくなった。
泣きはらした目は、誰が見ても明らかで。
部の男性たちは
「佐々木さん、どうした?」
と気を使ってくれた。
女性の先輩は
「飲みに行くかぁ」
と、誘ってくれて、
今まで部が違って接点のなかった人たちが
このプロジェクトを通して、仲良くなれたのが嬉しかった。
吉野さんとの関係が終わっても。
このプロジェクトに参加で来てよかったと思うことの1つだ。
吉野さんは、そんな私にはまったく変わらない態度で
「佐々木さん、この資料から、このデータ―抽出して」
と、次々と仕事を回してくる。
その人の口から。二度と
「麻子」
と聞けないのかと思うと、また涙腺が緩むけど。
ずっとそんなことじゃいけない。と思いなおした。
何か行動を起こさなきゃこのまま終わっちゃう。
吉野さんが日本で最後の仕事の、このプロジェクトを
最後まで綺麗に仕上げて、
そして、私も最後の日には吉野さんと
もう一度、今までのことと今後のことを話しあいたい。