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アンバランス
【OL/お姉さん 官能小説】

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アンバランス-7

(6)


(同棲してもいい……)
何度かヒロくんと夜を過ごし、私はそう思うようになっていた。そばにいると何だかほっとするのだ。
 でも彼は大学生、勉強もある。邪魔になるに決まってる。思っていても口にはできなかった。
 私以上にヒロくんは気を遣っているように感じられた。お風呂も自分から入りにくることはなかったし、セックスをしても泊ることはめったになかった。体を求めて若さをぶつけてきてもいいはずなのに、飢えた目を見せたことがない。私は襲われたいと思う時さえあるのだけど……。


 お互い目の前に住んでいるのに10日も会わないこともある。そんな時、夜、ベランダからヒロくんの部屋を眺める。
(会いたい……)
ヒロくんだってそうだと思う。セックスだって……。溜まってるだろう。私だって……。
(淫乱な女だと思われたくない……)
装った自制が働いていた。

 偶然、カーテンが開く。手を振り合う。私がメールを打つ限られたタイミングだ。メールも頻繁では煩わしいものだ。
『お風呂、わいてるよ』
少しして、
『ありがとう。お邪魔します』
着替えを抱えてやってきたヒロくんは少年のような笑顔だった。

 ある日曜日の朝、私は心にぽっかり空洞を感じて溜息をついた。なぜなのかわからない。これまでと何も変わっていない。仕事も淡々と……。ヒロくんともうまくいっている。毎日充実している、とは言い切れないけど、空虚なことはない。

『買い物行かない?』
返信はすぐにきた。
『行きます。ありがとう』
ありがとうという言葉が嬉しかった。

 連れ立って歩くのは初めてだった。
ヒロくんカートを押してスーパーの店内をあちこち見て回った。私はこの時ほど気持ちが浮き浮きしたことはない。ある種の昂揚感が膨らんできた。それは抱き合ったりしている時とはまったく異なるもので、やすらぎに満ちた、穏やかな風のようなやさしい感覚だった。
「お姉さん、ぼくと歩いてて恥ずかしくないですか?」
ヒロくんがふと言った。
「なんで?」
「だって、こんなチビで釣り合わないでしょう?」
「そんなこと、全然思わないよ。すっごく楽しい」
(ヒロくん……)
彼のどこか遠慮がちな心の片隅が見えた気がした。
 不釣り合いというなら私のほうだ。彼と並んだら私は『おばさん』に見えるにちがいない。不倫してた時とは逆の立場になっていることに気付いた。

 あんな立派な男のシンボルを持っていてもヒロくんにとっては、まず小柄な体がコンプレックスとなっているのだろう。私を含め、ペニスに魅入られた大人の女の本性を見て男の自信を得たものの、それは肥大した局部によるもので自分にではない。……そんなことを感じていたのだろうか。
(私はどうなのだろう……)
ペニスにだけ引きつけられているのではない。でも、もし、彼の一物がこれほど特別でなかったら、どうだろう。巨大な膨らみを目にしなかったら、男女の関係に繋がっただろうか。小柄な彼に『男』を感じただろうか。
(ヒロくんが好きだ……)
それは確かだが、その想いに『逞しいペニス』は癒着していないだろうか。……振り払うことはできなかった。


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