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BLOOD LINE
【女性向け 官能小説】

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4-1

彼女は私生児だと言った。父親にはすでに家庭があったが、結子の母親が20代の頃知り合い、深い関係になった。
母親は結子を身ごもったが、堕胎はしたくないと産むことを決めたそうだ。
母親もまた母子家庭で育った女だった。始めは認知すると言っていた男だったが、気が変わったのか認知はしなかった。それでも時折、生活費を渡すために自分たちに会いに来たのだと言う。
だが、結子にはその記憶がない。
物心つく前に、二人は完全に別れたようだった。母親もそのことについては話したがらず、結子もまた、聞いたところで状況が変わるわけでもないと思うようになった。
生活は楽ではなく、思春期には無責任な父親を憎んだこともあったし、そんな状態で自分を産んだ母親を愚かだとなじったこともあった。
高校を出て就職したのは都内の人形の卸業者だった。従業員が5人と言う小さな会社だったが、早く家を出たかった結子は真面目に働いていた。
「そう言う“かわいそうな子”って、男にはわかるのね」
富岡の腕の中で、けだるそうに言った。
「社長が旦那で、常務が奥さんみたいな小さな会社だったんだけどね」
倉庫で在庫チェックをしていた結子は、そこで社長にレイプされた。真面目に働いて、時折自分の言うなりになるなら特別に手当てをつけてやる。一人暮らししたいなら、部屋も借りてやろう。
「愛人ってこと?」
「そんな高級なものじゃない。儲かってない会社だったから。社長とやったらその都度1万もらったわ。ポケットマネーね、帳簿は奥さんが握ってるから経費を使えなかったんでしょう。売春みたいなものかな」
しかし、小さな会社でそんな特別な関係が露呈しないわけがない。社長の妻の知るところとなり、結局就職して1年足らずで結子はクビになった。
「訴えられないだけ有難いと思え」
それが最後に浴びせられた言葉だった。
「私も悪いから仕方ないよね。あんなジジイ大っきらいだったけど、やればお金もらえるんだもの」
それにバージンでもなかったしね。
腕を伸ばしてタバコを取ると火をつけた。
「富岡さん、子供いるの?」
「いや」
「そっか。もしいたらこんな娘に育てちゃだめだよって言おうとした」
富岡はそっと結子の髪を撫でた。かわいそうと言うよりも、哀れな気がしてならなかった。
それは決して彼女が私生児だから辿った人生ではない。
どこかで少しずつ歯車が狂ったに過ぎないだけだ。
「結子の写真が見たいな。おやじさんと写ってるやつ。子供の頃の結子を見てみたい」
「母のところにあるけど、行きたくないのよね。母、再婚したのよ。どうも私とは合わなくてね」
そりゃ、こんなひねくれた娘じゃね。そう言って笑った。
サイドテーブルのスマホを取るとすでに19時を過ぎていた。今日は妻が大阪からもどる日だ。早めに帰らなければ。
「俺、もう行くよ」
「わかった。私はもうちょっと休んでから出るわ」
「そうか。じゃぁ、また」
「うん」
最後にもう一度キスをして、富岡は身支度を整えた。


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