を-5
「もう1つあるなら・・・この関係が終わるまで俺に貸してよ」
貸して、よ。
それははっきりと終わりが見える関係で。
終わることが前提の言葉。
本当の恋人だったら「頂戴」になるのかな。
「ダメ」
「ケチ」
そう苦笑いして。
「何か着てから寝ろよ」
そう言い残して吉野さんは帰って言った。
ガチャン―――
と鍵を閉める音はどこまでも冷たくて。
かすかに吉野さんのトワレだけが私の身体にまとわりついていた。
何もセックスが終わってすぐに帰らなくてもいいじゃないの。
しかも自分の食べたお弁当の容器まで綺麗に持って帰ってさ。
そう文句をぶつぶつ言いながら
身体を起こしたら、空になったビール缶だけが
そこに残されていた。
好きになっちゃいけない。
そう心の中で呟く。
「好きになっちゃいけない」
声に出して言ってみる。
3ヶ月後には、確実にいなくなる人なんだ。
向こうは私のことを始めから後腐れのないセフレを希望して来たんだから。