Animals-1
「なんだか人が多いですねぇ？」
週末の夜に、隣町の駅前に買い物に来ています。
基地の町なので外国人が多いです。
飲み屋さんが多くてガラが悪いのですが、
珍しい食材を買えるお店があるので、ナオさんについて来てもらいます。
駅のアナウンスが入ります。
「立川駅付近でケーブル火災が発生しました。
上下線で運転を見合わせております。
現在のところ、復旧の見通しは立っておりません。
お急ぎの所、大変ご迷惑をおかけします」
みんなため息をついて、ウンザリした顔をしています。
「長く止まってるみたいだね」
私たちは、
近くの駐輪場にママチャリを停めて来てるので、影響ありません。
「なんだよ！おおっ！？頭くんなぁ！」
現場帰りのガテン系のおじさんたちが、
眼鏡に小太りの駅員のおにいさんに、詰め寄っています。
お酒の空き缶が転がっています。
駅員さんは対応に追われて、アブラ汗で顔がテカっています。
「チキショウ！お店に行けねーじゃねぇか！一週間も溜まってるのに！」
「俺なんか二週間だ！どうしてくれんだ！あぁ！？」
「金返せJR！払ってねぇけど！」
「も、申し訳ありまっせん！」
「頭…悪そうだ…」
「いやぁね、ドカチンって。アニマルって感じ」
「お前コッチ来い！犯してやる！」
「「「ええっ！？」」」
この人たち、何言っちゃってるの！？
周りの通行人もキョウガクです！
「ヒイッ、許してください！」
駅員さんは胸ぐらをつかまれて、誰でもトイレに押し込まれてしまいました！
「いくら多機能トイレだからって」
「滝の？おトイレ？…何が起こるの…」
美さきちゃんがいよいよ混乱して、訳の分からない想像をしています。
不安そうに私とナオさんの顔を見比べます。
「設備が整った、多用途トイレのことよ。
滝じゃあ、うんちゃんと一緒に流されちゃうよ」
「いやぁっ！生でしないで！」
「ウルセェ！ニンシンしろ！この野郎！」
「やめてぇー！中で出さないでー！」
誰でもトイレの中から、駅員さんの悲痛な叫び声が聞こえてきます。
「はわわ…メチャクチャだ…」
「ナオさん、駅員さんがレイプされちゃう」
「男子は知りまっしぇん」
お年寄りや子供ならともかく、男の人にはそっけないナオさんです。
ナオさんはこーいう人です。
お巡りさんも忙しいのか、通りかかった交番は、からっぽでした。
これ以上できる事もないので、お買い物をします。
買い物を済ませて、また、駅前を通って駐輪場に戻ります。
誰でもトイレのドアが開いて、
さっきのガテン系のおじさん達が、ゾロゾロと出てきます。
開いたドアから中をのぞき込みます。
さっきの駅員さんが、お便所の床でうつ伏せになっています！
下半身は靴下だけで、サメザメと泣いています！
トイレの床には、制服のズボンや、白いブリーフや靴が散乱しています！
よってたかって乱暴されたようです！
「ヒクッ、ヒクッ。こんなっ！酷いよっ！」
ブピッ。ズビビ。
「ぅうわっ！？」
思わずのけ反ります！
駅員さんのお尻から、世にも汚い汁が垂れ流しになってます！
正直、胃がムカムカします！
ムカムカ！ムカムカ！
目がけがれた！
「ん…がぁ…」
小学生の美さきちゃんも、悪夢の現場にアングリです！
「見ないであげて」
ナオさんは悲しそうに、美さきちゃんを抱き寄せます。
「ダメだ…この街は燃やそう…」
「米軍基地があるせいか、治安が悪いね」
「とても良かったな」
「俺、夢中になっちゃったよ。恥ずかしいな」
「はは、俺もそうだって」
「アイツ、いい物持ってるよ」
ガテンのおじさんたちは皆、口々に、はずかしめられた駅員さんを誉めそやしています。
先ほどと打って変わって、とても穏やかな人たちになりました。
なんか急にいい人っぽくなった。
一体、
男の人の精神構造は、どうなっているのでしょう？？？
「まだ電車止まってんのかぁ？」
「しょうがねぇなぁ、飲みに行こうぜ」
「そーだな」
グリグリとポジションを直しながら、ちょうちん街に歩いて行ってしまいました。
「あいつら…何でもいいのか？…」
「駅員さんかわいそう」
「世の中って、キビシイわぁ」