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〈熟肉の汁〉
【鬼畜 官能小説】

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〈人外の戯れ〉-2

『へぇ〜……本気で君のコトを好きなんだろうなあ?でも奥さんは小難しくて我が儘な女だし、なかなか心までは開かないぜ?』

{ぼ、僕には開いてくれるさ!だって…だって恭子は僕の腕の中で甘えたいって思ってるんだからな!}


焚き付ける台詞に天パ男は簡単に釣られ、歯の浮くような台詞を並べて鼻息を荒くした。
鬼畜も呆れる思い込みの強さは、恭子が必死になって守ろうとしている《生活》を、きっと壊してしまうはず……それは極めて危険な思考といえた……。


『ところでさあ、明日はやっぱり止めようか?昨日の今日で君が現れたって、サプライズにしちゃ弱いだろう?』

{なッ!?なんで…なんでだよ?}


天パ男の動揺は、通話越しにでも目に見えるようだった。
二度も腕の中から意中の人妻を奪われそうなのだから、その狼狽えも無理もなかろう。


『何を焦ってんだよぉ。「もう会えない」って諦めかけた時に現れた方が、胸にキュンとくるだろう?格好良く一発で奥さんを落としたくないの?』

{そ…そそッ……それはそうだけどさ……}


射倖心を煽りながら、鬼畜は自分から持ち掛けた恭子の売春行為の延期を告げた……目の前に並ぶモニターには、恭子に向けられた悍ましい欲望を書き連ねたメールが、続々と送られてきていた……。


『そう落ち込むなって……そうだ、奥さんに差出人不明のプレゼントを送っておこうか?「誰からだろう?」って思ってたプレゼントが君からだってなったら、全てを棄てて君の胸に飛び込むはずさ』


延期を告げながらも、鬼畜は天パ男に金品を要求した。
この辺の無神経さというか図々しさは、惚れた者の弱さを熟知しているが故だ。


『あれ程の美人だ、いろんな男に言い寄られてきてるはずだろ?やっぱり愛だけじゃなく経済力もデカいってトコを見せた方が……なあ、他の男と“格の違い”ってヤツを見せ付けようよ?それとも君は、奥さんに〈不自由〉をさせるつもりかい?』

{ま、まさか……恭子は僕の全てさ。お金なんて幾らでも出してやるさ!}


駄目元で吹っ掛けた要求に、天パ男は簡単に乗っかった。
誰だって好きな女性には良い所を見せたい……ましてや恭子ほどの美貌を誇っているなら尚更な事……愚か者は鬼畜の掌に乗っかり、財布の口を自ら弛めた……。


『そうだなあ……奥さんにはやっぱりブランド物のバッグとかアクセサリーかな?結構いろいろ持ってるみたいだし……とりあえず五0万でどうだい?』

{や…安いんじゃない?それくらいなら、僕なら直ぐさ}


望んだ結末には決してならないのに、無駄な虚勢を張っている。
まだ恭子を抱ける確証すら無いのに金を払う約束をしてくれる天パ男は、同情するに値しない良いカモだ。



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