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珍客商売〜堕ちた女武芸者〜
【歴史物 官能小説】

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慰めあう女-3

「私や、お前の…! 一体どこに罪があったというのだ!! 私はただ…哀れな女の…仇を討ってやろうとしたのに…。こんな…こんな酷い目に…っ!!」
 椿は拳を握り締め、身体を震わせながら泣いている。
 あまりの痛みと苦しみの連続ですっかり凍りついていた心の壁が、その言葉で決壊したのだ。
 お京も起きて、泣きじゃくる椿を優しく抱きしめた。
「お嬢さん…本当にお可哀想に…。でも、ご隠居の忠告も聞かず一人で出歩いたり、ご自分で一味を捕まえようとしたり…。剣の腕前を鼻にかけて、どこか心に驕りがあったんじゃございませんか?」
「そ、そんな…っ!! 私は! 私は…っ!!」
 お京の口から飛び出した思いもかけぬ鋭い言葉に椿は驚いた。
 藤兵衛も、大二郎も、了順も…心には思っていても、決して言わなかった言葉である。
 今回の一件の無残極まりない結末…。
 女にとって一番大切な操を奪われ、弦斎たちから受けた凄惨な凌辱と暴力も、生き恥を晒し尽くした恥辱も、全て己の軽はずみな行動が起こした自業自得の結果ではないか…?
 心の中で薄々感じていたことを看破された、臓腑をえぐられるような一言であった。
 それゆえ、椿は取り乱さずにいられなかったのだ。
「私は悪くない!! 私は…私は…。例え私に落ち度があったとしても…。あのような非道なことをされ…もう二度と…嫁にも…行けぬ身体に…されるいわれは無いっ!!」
 再び大きく泣きじゃくる椿。弦斎による残酷な凌辱の数々が脳裏に甦っているのだろう。
 その耳元でお京はそっと囁いた。
「あたしには…心当たりがありますよ…」
「…えっ?」
「お上の十手を預かる身でありながら、実のお父っつぁんと長年まぐわい続けて畜生道に堕ちた罪…」
「…な…に?」
 椿が表情を変えた。
 お京とは旧知の間柄であるが、そんな話は初めて聞いたからである。
「あたしがお父っつあんに無理やり女にされたのは、十三の歳でした…。それ以来、毎日のように犯されて…」
「お京…。それは…まことなのか?」
 驚いた椿はお京の顔を見つめ直した。
「最初は死ぬほど辛かった…。こんなこと、いけない事だとわかってるのに…。何度もやめようとしました。でも、いつの間にやら身体が…身体が…。お父っつぁんに突かれると、天にも昇るような心地で、腰が抜けちまって…。泣きながらとっぱずしちまうんです」
 椿にとって身分は違うがお京は姉のような存在であった。
 今回の一件でも自分のために身体を張って助けようとしてくれたという深い感謝の気持ちもあった。
 しかし、今その言葉を聞いて大きく信頼が揺らいでいる。
「あたし、ご隠居様から隠密の無残な最期を聞いて…自分を慰めました。股座を槍で刺し貫かれる気分になって、ぼぼを一生懸命くじって何度も果てました。あたしもあんな風に滅茶苦茶にされたい…って心の片隅で願ってました。神様や仏様はみんなお見通しだったんですよ。お嬢さんも…そうだったんでございましょう?」
 あまりのことに椿は二の句が継げなかった。
 耳元で囁かれる、『ぼぼ』という卑猥な言葉。
 激しく犯されながら弦斎たちにはさんざん吐きかけられたが、女のお京の口からその言葉が出ると、あらためてどきっとする。
 股間に当てられたおむつの奥で、椿の『女』が反応して、思わずじゅん…と濡れた。
「女性(にょしょう)は生まれた時から三千世界の罪障を一身に背負っている…って死んだおっ母さんがよく言ってたんです。荒くれ浪人にさんざん犯されながら、ずっとその言葉が頭を巡ってました…」
「お前という女は…お前という女は…。見下げ果てた犬畜生ではないか! ぼぼを矢で射られても当然の売女だ!!」
 今まで決して口にすることの出来なかった恥ずかしい言葉が、姉と慕っていたお京に対する激しい憤りが、自然と口をついて出てしまった。
 それだけ心が大きく揺れているのだ。
 大きく目を見開いてお京を見つめる椿の声は、心なしか震えていた。
 お京は構わず続ける。
「だから、あたしの一番淫らな、いやらしい場所に、きっつい…お仕置きをくらったんですよ。あの矢が貫いた時…火のついたような痛みに苦しみながら、そう感じているもう一人のあたしがいたんです」
 そう言って涙を浮かべるお京は黙って瞳を閉じた。
 そしてもう一度、椿をしっかりと抱きしめた。
「我慢しないで思いっきりお泣きなさいな。あたしを罵ってもいいんですよ。こんな辛い目にあったあたしら二人の間で隠し事なんか嫌ですよ…。水臭いじゃありませんか」
「…ううう。うわあああああ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
 その言葉に、椿は大声を上げて泣いていた。
 どんなに辛くても、死にたくても、決して口に出すことの出来なかった様々な思いが、号泣となって溢れ出し、椿の心を洗い流してゆく。
 お京はその慟哭を黙って受け止め、ただずっと抱きしめるのだった。

 その様子を襖の隙間からこっそり覗く男がいた。
 言うまでもなく、二人の主治医・大川了順である。
(さすがは名岡っ引きと呼ばれたかんざしお京じゃ…。あえて自分の恥を晒して椿殿の心を見事に開きおった。やはりあの二人を一緒の座敷にしたのは正解じゃったな。この雰囲気に水を差してはまずい。傷の治り具合も順調じゃし、今日の診察はやめておこう)
 了順は薬箱を抱えて立ち上がった。
 診察道具を持って後ろに控える弟子にも目配せし、そそくさと立ち去った。
(それにしても…あのお京が、父親とまぐわっておったとは…。驚きだわい。これはわしだけの胸に納めておかねば…。弟子にも口止めしておこう)
 お京の口から出た思わぬ艶話に、了順の胸には久しく忘れていたときめきのようなものがあった。
 何十年も医者を続けて若い女の患者のどこを診ても動じなくなった老医師だが、明日からのお京の診察には少々やりにくさを感じることだろう。


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