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呪縛の檻
【その他 官能小説】

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謎の男-3

 すると秀慈が自分を怪しんでいるなと気がついた東条は身分を明かした。

「俺は君が考えているような輩ではないよ。絵茉ちゃんのお父さん――五十嵐和成さんは高校の先輩だったんだ。彼女のお父さんの事でね、ちょっと絵茉ちゃんと話したいことがあったんだけど・・・。」

「絵茉は家に帰りました。直接うちを尋ねたらどうですか?」

「んーー・・そうしたいのは山々なんだけどね、絵茉ちゃんと二人きりで話したいんだ。」

まだ疑いを隠せないでいる秀慈は黙ったまま、まじまじと東条を睨み付けていた。

「聞かれては困る話って事ですか?」

「そうだね。特に君のお父さんにね。」

「父に?!」

秀慈は食らいついた。もしかしてこの男は父の秘密を何か知っているのかもしれない。そう直感した。

「あなたは父の何かを知っているんですか?」

「知っていても実の息子の君には言えないな。」

「教えてください!・・・僕は父を許せないでいるんです。」

「――それを証明できるの?そう油断させておいて、雨宮社長に何か告げ口するんじゃない?週刊誌で読んだよ、君すごい博識なんだってね。」

「あなたこそ、僕が手助けをしないと絵茉には会えないですよ。」

「ハハハッ、やるねぇ。じゃあここは何だから、話の続きは俺の車の中でしないか?」

秀慈は警戒する。こうして誘拐する気か・・・?しかし東条は先回りして言った。

「誘拐なんてしねぇよ。俺は金は沢山欲しいが、金に困っている訳じゃない。何なら俺の名刺やるよ。ほら。」

東条はポケットから名刺を一枚抜き取ると秀慈に差し出した。
“フリーライター 東条竜太郎”
どうやら東条が雑誌か何かで記事を書いている人だという事が書いてある。しかし名前と連絡先しか書いていない。

「まぁ最近じゃあ、メジャーな雑誌で仕事してないからな。知らないと思うけどよ、月刊懐古っていう昔の事件・出来事や流行ったものとかを懐かしむ記事を書いている。よかったら後でホームページでも見てくれよ。」

「でもこの名刺は偽物かもしれない。そんな雑誌はないかもしれない。今証明して見せてください。」

「疑り深いねぇ・・・まあ、大企業の社長のお坊ちゃまだからしょうがないのか。」

そう言うと東条はスマートフォンを取り出し、すぐに自身の執筆した雑誌のサイトを表示して秀慈に見せた。

「これでいいか?」

秀慈はかれのスマホを受け取ると、まじまじと画面を見つめた。
雑誌の内容は主に昔の殺人事件のその後を追っているものが多いと感じた。秀慈は納得し彼にスマホを返す。

「月刊懐古を作ってる会社は本当小さくてよ、社員も少ない。俺もライター以外の仕事も手伝ったりして大変なんだが俺はこの仕事を誇りに思ってる。書かせてもらってるだけありがたいと思ってんだ。ボンボンの秀慈君にはわかんないかもしれねぇけどな。」

「いえ、そんな事は思いません。誇りに思える仕事につけない人もいると思いますから。」

「ふーん、君なかなかいい事言うね。じゃあ、行こうか。」

「―――はい。」


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