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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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-3

二十歳の久乃は程よき肉付きだった。幼き頃より下ぶくれの顔は今もそうであるが、乳房も適度に膨らんでおり、後藤が揉むと、手のひらの中で嫋やかに形を変えた。

 思えば十二歳の時、昌幸によって破瓜を遂げ、それ以来、若い男よりは年配の男を好む質(たち)の久乃であった。五十四だという後藤を相手にしても、さほど嫌ということはなかった。

「おまえ、名は何という?」

乳首を摘ままれながら名を問われ、お久と答えたところ、後藤は「お久、可愛いのう」と何度も言い、乳房の間(あわい)に髭面を埋め、目の前の乳首に吸い付いた。
 やがて、女陰をまさぐられ、幾分あそこが湿り気味になってきたと思った頃、後藤は埃まみれの袴(はかま)を脱いだ。脛や腿に無数の古傷があり久乃は少し驚いたが、男はそそくさと下帯も外して交接を挑んできた。
 図体に釣り合う量感ある一物が女陰に分け入ると、久乃は思わず切ない声が出てしまった。稀代・伊代姉妹ほど頻繁に男と交わることのない彼女は、後藤ほどの大きい男根に巡り会うことがまれで、膣口を目一杯押し開いて嵌(は)まるものに戸惑いを覚えていた。
 いっぽう、後藤は、男慣れしていると思った相手が、意外と地女(その土地の一般の女性)のようなつましい反応を見せるのが新鮮で、『これは面白き女に出会った』と喜びながら腰を振っていた。
 そうしているうちに、久乃から甘い声が漏れ始める。大ぶりの魔羅で女陰をこすられるのだから当然だが、後藤が久乃の嗜好から外れていないことも、けっこう大きな要因のようだった。

「……あああぁ…………。……んんんん…………」

控えめな嬌声が、かえって後藤を刺激する。そして、秘壺の締まりもなかなかだった。

「んあっ…………。はううっ………………」

常に開(ぼぼ)の引き締めに励んでいる稀代・伊代の持ち物ほどではないにしろ、九度山の傀儡女は女陰狭隘の鍛錬を積んできているので、世間一般の女よりは「いい味」の道具を備えていた。

 下ぶくれの頬を上気させ、喘ぐ久乃。後藤は一度、中で出してしまっていたが、少し萎えた魔羅でそのまま抽送を続けているうちにまた完全な硬さを取り戻し、力感ある突き入れを繰り返した。

「あああーーーーん。……うううーーーーん。……いや、だめ…………、あああっ!」

立派な肉竿で突かれ続けては、淑やかな久乃も快楽の淵に引きずり込まれる。喘ぎはすこぶる官能的になり、ひたいには汗が滲んでいた。
 そうして、ついに絶頂が彼女に訪れる。

「んんんっ!!!!!!! …………………………………………………………」

静かな逝きざまだったが、細かい身体の震え、間欠的な膣の窄(すぼ)まり、四肢の緊張が、深い絶頂であることを物語っていた。
 後藤は男の自負を満たされ、あとは二度目の射精を遂げるばかりと矢継ぎ早に大魔羅を繰り出す。そして、久乃を再燃させ、またもや悦楽の頂点に導いてから、ドッと吐精した。

 束の間の陶然から我に返った久乃は、思いのほか乱れてしまったことを恥じらい、身を縮めていた。そんな彼女に、後藤は下帯を締め直しながら莞爾(かんじ)と笑いかけた。

「出世払いでまぐわってもらい、済まなんだの。後日、城勤めが叶い、名が広まった折には、わしを訪ねて参るがよい」

「……後藤……基次さま、でございましたか」

「基次は本名なれど滅多に使わぬ。又兵衛……、後藤又兵衛を訪ねて参れ。今日の礼を、たんと弾むでな……」

巨漢はそう言うと、また印象的な笑みを浮かべ、去っていった。


 同じ頃、京の片隅で由莉は別な巨漢と対峙していた。

「この娘! わしの教え子になんということをする!」

凄い剣幕で食って掛かっているのは読み書き算盤を教えている長宗我部盛親であった。今でこそしがない寺子屋の師匠だが、元を正せば四国を席巻した土佐の大名、長宗我部元親の子である盛親。彼は関ヶ原の役で西軍について戦ったため領国を奪われ牢人となっていた。今は四十の齢(よわい)になる。そんな盛親に対し口答えする由莉。

「ちょっとばかり、おそそ(女子の陰部の異称)が気持ちよくなるやり方を、この子に教えただけじゃないか。そんなに怒ることはないだろう」

由莉は真田紐の材料である絹を安く仕入れながら京の情勢を探るために都へ足を運んでいたが、町はずれで十歳くらいの可愛らしい少女を見かけ、声を掛けたのだった。その後、古びた神社の拝殿の裏で秘陰が気持ちよくなる方法を懇切丁寧に教えていたところ、参拝に来た盛親に見つかったというわけだった。

「あんたが寺子屋の師匠なら、あたいはおそその師匠さ。あんたは読み書きを教えるのが役目、あたいは女の悦びを教えるのが役目」

悪びれた様子もなく言う由莉に、盛親はますます激高して怒鳴り立てた。

「悦びを教えるだと? 女どうしでどういうことだ! おまえは、いたいけない子供のあそこに指を差し入れるばかりか、舐め回そうとしていただろう」

「そうだよ。せっかくいいところだったのに、そこへあんたが割って入ったんじゃないか。この、独活(うど)の大木め!」

詫びるそぶりも見せず、逆に罵倒され、盛親は思わず手を振り上げた。そこへ、

「こらあっ! 由莉ぃ!」

盛親を上回る怒気を帯びた男が向こうから駆けてきた。


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