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例えばこんなカリキュラム
【二次創作 官能小説】

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〜 数学・紹介 〜-3

『そして、入学式から3か月して、初めての統一考査がありました。 考査前の一週間は、おそらく私の人生で二度とないくらい勉強したと思います。 ずっと意識を失うギリギリではありましたが、不思議なくらい勉強に集中できました。 身体も心もボロボロだったはずなんですが、自分の力を殿方と同じ土俵で試せる喜びで、限界以上の力が出せたんだなと、今は思っています。 試験の結果は、点数も順位も、すべて全員分が掲示されました。 私の結果は……ふふっ』

 ニッコリ。 
 教官が浮かべた微笑は、けれど明るい声色とは裏腹に寂しそうなものに、私には見えた。
 
『全生徒100名の中で私が断トツの最下位でした。 990点満点中、560点です。 そして、99位の学生が……私の隣にいたAさんで……Aさんは955点でした。 翌日、私は大学事務に行き、退学願いを提出しました』

 シーン。 教室が更に鎮まりかえる。

『私の身分は『大学中退』、そして『短大編入』になりました。 そこで教職を学び、学園の教員に採用して頂いて、今に至ります。 もしも大学を止めなければ、ギリギリ卒業して、殿方たちの職場の末席に名前を連ねられたかもしれません。 けれど、私は自分の選択を後悔してはいません。最初に言った通り、あまりにも実力が違いました。 努力だけじゃ埋められない、才能というものは存在します。 皆さんもG遺伝子はご存知ですね? 遺伝子レベルの才能を違い前にして、自我を保ち続けるには、私では役不足だったんだろうと思います』

 寂しげな笑みを浮かべながらも、淡々と続ける17号教官。

『というのも、私には数学しかありませんでしたから。 数学で太刀打ちできないなら、もうそこでお終いでした。 だから、皆さんには『数学以外』にも拠り所をもった上で、数学を必死に鍛えて欲しいと思っています。 そうすれば、きっと私とは違った形で、道は開けます』

 真正面から、私たち1人1人を見つめる教官の瞳は、他の教官とは違った鋭さがあった。

『私は一生懸命教えます。 ですから、皆さんは私を超えてください。 私が届かなかった『殿方』の域に誰か1人でも教え子が到達することが、学園教員として生まれ変わった私の夢です。 自分以外に夢を託す卑怯さを承知で、どうか皆さん、私の夢を叶えてください。 これから1年、よろしくお願いします』

 深々と。 教壇で腰を屈め、頭を下げる。
 私たちは17号教官に対し、何の反応も出来なかった。 今にして思えば、私たちは『拍手』で教官に応えるべきだったと思う。 他の教官ならいざ知らず、17号教官は、私たちが拍手をしても気分を害しはしなかったろう。 

 けれど、度重なる叱責と指導で萎縮していた私たちは、お辞儀する教官に対し全く反応できなかった。 たった1人、委員長の22番さんだけが、小さく会釈を返したきりだった。

『では、最初は計算練習からです。 全ての数学は数字同士の関連から始まります――』

 こうして『数学』の講義が始まった。
 私にとって、17号教官は少し小皺がよった、穏やかな女性なだけじゃなくなっていた。 誰しもが夢見る『大学進学』を成し遂げたヒーロー、いやヒロインだ。 決して大袈裟ではなく、私が目指す生き方を、彼女は体現した。 そして、率直な誠意をもって、私達を本質的な高みへ引き上げようとしてくれている。 ならば私も精一杯の誠意で答える。 それは即ち、苦手な数学であったとしても、全身全霊で取り組むことだ。

 他の授業にはない颯爽とした風が、私の心を湧き立たせた。


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