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例えばこんなカリキュラム
【二次創作 官能小説】

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〜 数学・紹介 〜-2

『学園では1組で4年間過ごしました。 寮は、今でもありますが『莉性寮』ですね。 Cグループ生を1年、Bグループ生を1年、Aグループ生を2年で卒業しました――』

 17号教官の言葉は、平易で分かりやすかった。 勘が鈍くて教官たちの意図を忖度(そんたく)できない私でも、十分に理解できる内容だった。 そして、これまで全く見えなかった『学習』によって拓ける未来を、私達に端的に示してくれた。

『――数学の能力は、皆さんにとって特別な意味を持ちます。 社会における『優秀さ』を証明するにはいくつかの方法がありますが、数学はそのうちの1つです。 学園で『数学成績が首席ないしそれに準ずる成績』かつ『成績自体が抜群である』と認められた者は、卒業時に『大学』で学ぶ資格を得ます。 牝だけが学ぶ『短期大学』ではありません。 『殿方』も学ぶ、本当の『大学』です。 つまり、私達のような劣等な存在でも、数学に秀でていれば、『殿方』のクラスメートにしていただけます』

 数学が出来れば『大学』に行ける? 職業を選択できる立場になれる? 
 人権を認められない『ヒト』ではなく、能力をもった『人』と認めて貰えるっていうこと?

『少し昔話になりますが、かつての私がそうでした』

 私は耳を疑った。 この人が? 17号教官が、実際に『大学』に進学した??

『数学は得意だったので、この科目だけは誰よりも一生懸命取り組んだと自負しています。 結果4年通じて首席を維持し、大学へ入学させてもらいました。 一時ではありますが『ちゃんとした服』を着て、『まっとうな家』に暮し、『おいしい食事』を食べて、殿方と共に学びました。 殿方と席を並べる以上、礼儀の意味は変わってきます。 学園では自分の立場に相応しい振舞いが求められますが、殿方の隣では、殿方を不快にさせないよう万全の体制をとることが礼儀です。 身だしなみ、健康保持その他諸々、学園とは全く異なる暮らしをしました。 みなさんに分かりやすくいうならば、みなさんが幼年学校時代に過ごしたように、身綺麗にして過ごしたんですね』

 シーン。 私を含め、誰もが息をひそめている。 

『……』

 ぐるりと教室を見渡す教官。 
 しばらく黙ったまま教壇で俯き、ふっ、と息を整えてから話を続けてくれた。

『……けれど、私は自主的に『大学』を退学しました。 殿方についてゆくには、私の数学力は全く歯が立たなかったんです』

 意外な展開。 けれど私達はしわぶき1つ立てることなく、教官の言葉に耳をすませる。

『大学の教授が説明する内容は極めて難解でした。 学習も、学園で体験したことのない進度でした。 板書をとる時間なんてありません。 関数電卓を操作する余裕もない。 すべて暗算で図示もできず、講義内容は100%暗記し、その場で理解しなければ次の授業が全く意味不明になってしまいます。 今でも信じられないのですが、私の隣の席の殿方――仮にAさんとしましょうか――は、2次の波動方程式の解法を、1度聞いただけで理解していました。 それどころか、簡単な問題であれば、10秒掛からないうちに波動方程式の解まで導いてしまうような、そんな方でした。 講義についてゆけずに頭を抱えて涙ぐむ私に、時々そっと解法のコツを教えてくださいました。 私にはその時点では分からないんですが、家に帰って復習すると、Aさんが言った通りなんです。 だから、Aさんは本当に理解していたんだと確信しています』

 旧世紀の偉人、シュレーディンガーが作った方程式は、幼年学校で概略だけは教えて貰った。 勿論数学力が足らなくて、私達には解けるわけもなかったけれど、兎に角出鱈目(でたらめ)に難しいことは何となく分かる。 それを、僅か10秒で、しかも暗算で解答する……?

『毎日睡眠時間を削って復習しました。 当時の平均睡眠時間は、おそらく3時間もなかったと思います。 ひたすら勉強して、講義を聞いて、また復習する繰り返しの毎日でした。 そうやって必死になって学ぶ内容を、隣の殿方はたった1度聞いただけで、私よりもずっと詳細に理解してしまいます。 本当に、なんで自分はこんなに頭が悪いんだろうと、毎日泣きながら勉強しました』

 平均睡眠時間が3時間……信じられないけれど、きっと本当のことなんだろう。



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