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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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-4

「……怪我してるの?」

少女はぽつりと言った。

「ああ。……だが、大丈夫だ。べつに何もしなくていい。ただひと晩、寝かせてくれればいいんだ」

「……そうなの」

「ああ、頼むよ」

少女はしばらくためらっていたが、やがて、こっくりうなずき、部屋の片隅に筵を敷いてくれた。

「ありがたい。……ついでと言ってはなんだが、何か食い物はないか?」

少女はぼんやりしていた。

「悪いが、何か食うものを恵んでくれ」

少女はまた、こっくりうなずくと、囲炉裏に掛かっていた鉄鍋から雑炊を椀に注ぎ、木匙を添えて曲者に差し出した。

「かたじけないのう」

男は雑炊にそっと口を付けたが、思いのほかの旨さに目を見はり、せわしなく匙を動かした。少女はその様子を、あるかなきかの笑みを浮かべて眺めていたが、この者こそ霧隠才蔵の妹で傀儡女見習いの沙笑だった。

『沙笑はまだ若いが、それゆえ、かえって曲者は警戒せぬであろう。山小屋で待ち受け、その者を世話し、添い寝し、身体を許してやれ。そして、瑞々しい女体で魅了し、男の心に入り込め。……はたして、それがおまえに出来るかな?』

片眉を上げる幸村に、沙笑は「出来るに決まっておる」と言い放ち、山小屋へ先回りしていたのだ。そして、主君の言ったとおり曲者がやってきたというわけだが……。

 その男は勧められるままに雑炊をたらふく食い、やがて、瞼が重くなって筵の上に横になった。
 そして、夜半に目覚めると、背中に温かいものが触れていた。半身を起こし目を凝らすと、少女が共寝しているのが窓越しの月光に浮かんで見えた。驚いたことに少女は全裸だった。

「………………?」

状況がよく飲み込めなかったが、やがて少女はうっすらと目を開けた。そして、男に微笑みかける。
 ゆっくりと起き上がり膝立ちになる少女。それは妖しいまでの魅力を放っていた。けぶる睫に彩られた切れ長の瞳。すっと通った鼻筋。愛らしい唇。白い喉。膨らみかけた両の乳房。くびれた胴。あるかなきかの陰毛。うっすらと脂の乗った太腿……。
 曲者の喉がゴクリ…と動いた頃には、沙笑は男にしなだれかかっていた。

「兄(あに)さま……、兄さま……」

甘く、切なく口走る。「これ、わしは兄さまなどではない」と男が言おうとするが、その口を沙笑の唇がふさぐ。
 うら若き乙女の吐息は香(かぐわ)しく、唾液は甘露であった。
 あとはもう、男から理性の箍(たが)が外れてしまい、性欲が総身を支配した。
 いつの間にか少女を押し倒し、若い肌を撫で回していると、魔羅が腹を叩くほどに屹立し、片脚が痛むのも忘れて交合に及んだ。

「あっ……あああああ〜〜〜〜〜」

泣くような声が少女から上がったが、女陰からの出血は見られず、初めはきつかった秘壺は徐々に緩やかになり、頃合いな締め付けで魔羅を刺激してきた。いや、頃合いというのは間違いだった。沙笑の膣は、さらなる狭まりを見せ、肉竿を食い締めて男を刮目させた。腰の動きを弱めて射精を引き延ばそうとしたが、秘肉の絡まりは強さを増し、やがて男は意に反してドッと吐精してしまった。

 精を漏らせば我に返るのが男というものだったが、仰臥する沙笑は「兄さま……」と囁き、懇願する顔で見つめてくる。「兄さまではないと言うに……」と男はつぶやくが、少女の固く立っている乳首、なめらかな腹、精液をこぼしながら半開きになっている女陰を目にすると、魔羅がムクリムクリとまたもや勃起してくるのだった。

 沙笑にひしと抱きつかれ、「兄さま、兄さま」という妙な嬌声を何度も耳にしているうちに、男はすっかりその気になり、我を恋い慕う少女を思いきり愛してやることにした。
 結局、三度、いや、払暁の射精を加えて四度も精を放った曲者は、さすがに青息吐息となり、沙笑を抱いたまま泥のように眠ってしまった。

 目覚めた曲者は、ようやく平常心を取り戻したが、まだ甘えてすり寄ってくる少女を抱き寄せ、『きっとこの娘は知恵が遅れているのだろう』とひとり合点し、警戒心をすっかり解いてしまった。そして、「兄さま、どこかへ行くん?」とか「兄さま、どこへも行っちゃいや」という言葉にほだされて、二、三日は山小屋に居続けてしまった。

 それでも、いつまでもこうしているわけにもゆかず、脚の傷もいくぶん癒えたので、男は後ろ髪を引かれる思いで沙笑と別れることにした。その頃には己の出自、九度山へ来た目的、自分の主(あるじ)などを、問わず語りに漏らしてしまっていた。それもこれも、「この娘には何を語っても大丈夫」と思わせた沙笑の演技の賜だった。
 曲者の正体は昌幸・幸村の予想通り高坂八魔多の手の者だった。予想を越えた収穫は、八魔多の目下の居所、配下のおおよその数、彼の右腕として六代目風魔小太郎がいる、などということだった。
 沙笑は、我が身の正体を隠しつつ敵の素性を探るという仕事をこなしたのはこれが最初であったが、その手並みを賞され、若くして「絹隠れの沙笑」という二つ名を有することになったのである。


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