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【スポーツ 官能小説】

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〜 日曜日・雑談 〜-2

 ……。


 砂場から校舎にいく道すがら、B22番先輩は『遊具』をつかった『芸』を22番さんに求めた。 遊具は鉄パイプを正方形の連なりを模してつくった、いわゆる『ジャングルジム』の大きなヤツだ。 タイトルを『風車』にして、遊具のてっぺんで演じるように告げた。 ところが、それまで躊躇なく芸をしてきた22番さんが、遊具にちっとも登ろうとしない。 何度かせっついて、ようやく登り始めたのだが、てっぺんに行くまでに固まってしまった。 当然芸は失敗で、その時『22番が高い所が苦手――軽度の高所恐怖症』なことに気付いたという。

 今日の新人チェックは、Aグループ生5人と寮監が、学園の彼方此方で実施している。 B22番先輩は『高さ』が絡むチェックポイントである、F棟屋上――更衣室や運動系部活の部室が並んでいる。 隣にプールがあり、プールの一部は水球や素潜り用に深く設えてある――へ22番さんを連れて行った。 

 チェック内容はポイントによって違うが、要求される本質は同じだ。
 即ち、新入生に『先輩の指示があれば、自分で自分の命を絶つ』ことを要求する。 先輩の命令は絶対であることと、自分の命が鴻毛より軽いことを知ることの2つを兼ねた儀式といえる。

 F棟屋上を担当した寮長に、22番さんが『学園にそぐわないが、どうしてもというなら今後も引き続き指導する』と告げたため、22番さんは生き残りをかけたラストチャンスを与えられた。 チャンスとは、屋上から思いきりジャンプして、隣のプールに飛び込むこと。 それだけの覚悟を示すことが出来れば、寮に残ってもよいというわけだ。 上手くプールの深みに着水できれば、多少の怪我はあっても命は助かる。 何も考えずに幅跳びの要領で4メートルも飛べば、まず問題なくこなせるレベルのテストだ。 ただし、途中で怖気づいて躓きでもしようものなら、勿論地面に赤い花が咲く――こともない。 救護装置が備えてあり、失敗しても擦り傷で済む。

 汚物にも痛みにも屈辱にも耐えてきた22番さん。 けれど、足許に広がる光景を見ただけで足がすくみ、どうしてもジャンプすることが出来ない。 B22番先輩は『そのうち飛ぶだろう』と予想していたらしいが、5分が経過しても結局1歩も動けず終い。

 寮長の眉間に皺がより、血管が薄っすら浮き上がる。 流石にB22番先輩も焦り、竦む22番さんに、

 『私を信じて今すぐ飛んで。絶対なんとかしてあげます』

 こっそり呟く。 この言葉をきっかけに、うわーっと大きく叫んでから、22番さんは屋上からジャンプした。 足がもつれ、勢いも足らず、満足なジャンプではなかったものの、すぐさま屋上から救護フェンスが広がってゆく。 そのまま地面に叩きつけられるはずだった22番さんはフェンスに包まれ、かすり傷1つないまま屋上に戻ってくることができたそうだ。

 だが、問題はここからだった。 新入生の心の負担を軽くするような言動は、チェックポイントにおいてはご法度だという。 なのに22番さんに『なんとかする』なんて呟くことは言語道断。 B22番先輩には2つの選択肢があたえられた。

 『自分が屋上からプールにジャンプし、22番に手本を見せる。 それから22番がフェンスなしでもう一度ダイブに挑戦する』

 『自分が目隠ししてジャンプし、プールに飛び込む。 その代わり22番にこれ以上の試練は猶予する』

 B22番先輩が選んだのは、後者だった。 仮に前者を選んだ場合、22番は無事ではいられないと思ったらしい。 よくいえば『後輩のために自分が厳しい道を選んだ』と言えるが、実際は少し違う。 勿論救護フェンスなんてない。 命の保証はどこにもない。 それでも後輩を失うことは、先輩にとってもダメージが大きすぎた。 傍で聞いている私は、先輩の優しさかと思ったけれど、そういう心理的な意味ではないという。 進学の査定に『後輩指導未達成』がついてしまったなら、まっとうな進路は選べなくなる。 そうなるくらいなら、多少自分が辛い目をしたとしても、未来を維持する方が得策なんだとか。

 元々ジャンプは得意だし、何度となくとんだ経験から、プールの位置も分かっている。 失敗すればどうなるか分かった上で、B22番先輩は目隠ししたまま見事に跳躍した。 離れたプールに水しぶきがあがり、しばらくして元気な先輩が水面に浮かぶ。 一連の流れを固唾をのんで見守っていた22番は、22番先輩がプールから屋上に戻るまで、ずっと屋上にへたって泣いていたという。 そしてB22番先輩が無事に戻ってきたとき、足許にすがりついて、掠れた声で何度も何度も謝ったという。



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