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【スポーツ 官能小説】

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〜 日曜日・模範〜-3

 慌てて直立する22番。 
 私もドキッとする。 てっきり1つ『芸』をすれば終わりと思ったのに、また別の『芸』をさせるつもりらしい。 たった1つでも必死になってようやく思いついたアイデアだ。 それなのに、1つが終わったからといって、すぐに別のアイデアをだせる代物じゃない。 

 私はB22番先輩が冗談を言っているんだと思いたかった。

 でも違った。

 私より一回り小さいB22番先輩は表情を変えず朗らかに、

「場所は砂場。 タイトルは『トンネル』に決めたです」
 
「ハイ!」

 無理難題を事もなげに放り投げる。 そして『ハイ』しか許されていない22番は、面喰った様子は束の間で、すぐに作り笑いを取り戻す。 彼女に出来ることは、元気よく首肯することしかない。
 
「よーい、スタート!」

「ハイッ!」

 22番は笑顔を崩さずにすぐさま動いた。 砂場の真ん中へ向かう歩みに迷いはない。 傍から見ているだけの私の方が、よっぽど動揺しているんじゃと思うくらいだ。

「んっ、んんっ」

 私達が見ている中、他とは違って湿っている場所に屈む22番。 さっき私が『噴水』の芸を演じた、まさにその場所だ。

 仰向けなるって、思いきり頭から砂場につっこんむ。 あまりにもあっさり顔が砂地に埋まった様子に私は言葉を失った。 よほど勢いをつけなければ、いくら砂場といっても、顔を埋めるなんてできやしない。 砂に擦れる肌が痛くないわけがないし、恐怖だってあるわずだ。 それなのにどうして、あんなにも躊躇なく動けるんだろう?

「……っ」

 ざく、ずぶ、ざくり。

 上半身を砂に埋める一方、足首から腿にかけて砂をかき、下半身もめりこませる。 両手で周囲から砂を集め、腰、腹、胸を覆い隠す。

 ものの数十秒でこんもりした砂の小山ができていた。 所々肌が透けてみえるが、顔を砂に突っ込んだまま身体に砂をかけた点を考慮すれば、出来過ぎといっていいと思う。 

「……ぷはっ」

 ズサッ。 潜り始めた場所から少し離れたところに穴が空く。 砂地に赤い唇が覗き、中から赤い片鱗が伸びる。 22番が埋めた顔を地表に近づけて、口をあけて舌を伸ばしたのだ。 そうしておいて砂だらけの手で股間を拡げ、皺がのびきるまで肛門を拡げる。 

「ありがとうございまふ!」

 崩れた砂で溢れた口を懸命に広げ、大きな声で『芸』の完了を告げる22番。

 事前情報を知らなければ意味がわからない『芸』でも、トンネルというタイトルを知っているから理解できる。 確かに全身でトンネルを表している。 肛門を出口、口を入口にみたてた、体内を通る1本のトンネル……。 オシッコを自分にかけた私よりも、22番の姿の方が遥かに不恰好だ。 と同時に、砂にもぐってオケツの穴をおっぴろげる姿は、良識や羞恥を突き抜けていてもいる。 そんな22番は、上手く表現できないけれど、私にとってキラキラしていた。

「なるほど〜。 そうくるですか」

「上出来だよ」

「悔しいですけど、まずまず、ってことにしときます」

「『にに』は素直じゃないなあ」

「『ニック』が甘いんです」

 両先輩ともに腕を組んでいる。 2人とも表情を変えないが、言葉から22番の『芸』を評価していることは分かる。 私も同じ評価をすると思う。 正直いって、何も思いつけず『安直』といわれた自分が情けない。

 それからB22番先輩と22番は、B29先輩に挨拶してから砂場を後にした。 せっかくなので遊具や池やベンチで『芸』をさせてみる、とのことだった。 一方で私とB29先輩は、砂場に残って2人を見送った。

 校舎の影に2人が消え、 

「さてと」

「……!」

 ぐい。 首輪に続くリードがひっぱられる。 慌てて見上げると、かすかにこちらを見下ろす先輩がいた。 

「次は私たちの番。 一度しか言わないからよく聞きなさい」

「は、はい!」

 先輩に命令されると思っただけで、背筋にゾクリ、寒気がはしる。 私に命じられる醜態のことを束の間忘れていて、もう命令は終わったような気になっていた。 そんなわけない。 考えれば当たり前の話で、22番は2度も『芸』をして、まだこれから『芸』を命じられるという。 対して私が、たった2度の『芸』で済むわけがない。

「貴方に任せていたら碌なことにならなそうだから、言った通りに動くこと」

「ハイ!」

「まずは砂場に穴を掘って――」

 先輩が指差す先を見つめながら、寒々とした感傷に囚われながら。 これから自分が意に染まない目に遭う確信を持った上で。 私は先輩の淡々としたトーンを聞きもらすまいと、耳に神経を集中した。 




 


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