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Training@Training
【スポーツ 官能小説】

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〜 土曜日・運動 〜-3

C ハンドボール投げ

 扇形にテープを伸ばし、中心のサークルから革製のボールを遠くにとばす。 広背筋と上腕筋、いわゆる肩力を測定する、スポーツテスト唯一の投擲種目だ。 グラウンドと違って室内なので、扇形の角度は45度。 判定が微妙なためライン上に落ちたボールもコースアウトと判定される。そのためちょっとでも投擲方向がそれればコースアウトで、3回の投擲で記録がでなければ『記録なし』の扱いになるが、最も『記録なし』が多い種目の1つだ。

 中心のサークルから伸びる2本のライン上には、10メートル、15メートル地点に合計4人の先輩が測定係として立っている。 測定係は遠投距離を測るのはもちろん、ラインの上及び外に落ちたボールをアウトと判定する役目をもち、ボールが床につくまでは持ち場を離れることが許されていない。 大きく外れたボールには何もいうことがないのだが、問題はライン上ギリギリにとんできたボールだ。 測定係が持ち場を離れないということは、つまりボールを避けてはいけないということだ。 測定係のどこでもいい、例えば横顔やおでこ、胸にあたったりすればコースアウトに判定される。

 少女が投げるボールに人を怪我させる勢いはないが、それでも顔面に直撃すれば鼻血くらいは普通にでる。 しかも1人につき3投するため、測定係からすれば、黙ってボールの的にされる気分だろう。 実際、生徒は当てまいと緊張して投げているのだろうが、結構な割合で見事に命中する。 時にはおでこに正面から当たり、跳ね返って投げた生徒のところに返ってくるボールもあるくらいだ。 そういうときは無表情を貫く測定係のこめかみに、うっすら青い血管が浮かんで見えるから面白い。

D 走り高跳び

 地上数10センチの高さで水平に伸びたバーを、どこまで落とさずに跳躍できるか。 身体のバネと加速力、タイミングからバランスまで、総合的運動力が問われる種目。 

 測定係は3人で、1人が跳躍の合否判定役、2人がバーの高さを設定する。 というか、2人は『バー』を支えるポールの役というべきだろうか。 2人のポール係は生徒が申告した高さにあわせて腰を屈め、その高さ丁度の位置で『舌』を伸ばす。 判定役はバーを2人の舌にのせ、生徒にスタートの合図を送る。 生徒が無事に跳躍すればそれでよし。 バーに身体をぶつければ、舌の筋力で衝撃を支えられるわけがなく、バーがポール役の口許から落下して失敗となる。 バーが落下しなくとも、身体がバーに触れた時点で失敗になる点が、幼年学校の走高跳びより厳しい点だ。 なにしろ舌で支えているのだから、ほんの少しバーに触れただけでも口の中にビンビン伝わってきて、見た目に動いていなかろうがすぐわかる。 

 こうすれば『バーが揺れつつも落ちない』だとか『バーがバウンドしてもその場に留まる』といった偶然に頼る成功を排除でき、より公平に身体能力を評価できる。 問題はポール役がきちんと高さを調節できるかどうかだが――これもポール役に選ばれた時点で何十時間も『バーを揺らさず姿勢を保つ練習』や『瞬時にあらゆる高さに合わせて腰を屈める練習』を積んでおり、十分にクリアできている。

 時には生徒がバランスを崩し、バーの真上に落ちることもある。 跳躍の場所をあやまって、ポール役の後頭部を蹴ったり、体当たりしてしまうこともある。 どちらにしてもポール役は生徒に背を向け、両手を背中に組んでスタンバイしているため受け身はとれない。 衝撃を受ければバカみたいに口をあけて舌をつきだした姿勢のまま、マットに顔から突っ込み、或は床につき倒されることになるだろう。 ただしそういうケースでは舌でバーの感触を云々する以前に『記録の失敗』が明らかなのだから、測定係の仕事に問題は起きない。 つまり、特に問題は生じない。 

 何十回と落ちたバーを舌にのせられ、汗と埃にまみれた味で口腔を充満させねばならない。 測定係という仕事は傍から見ても中々大変な役割だとわかる。 生徒に人気が内生徒会の中でも、特に体育委員になり手がすくないのもやんぬるかな、だ。

 
 ……。


 すべての生徒が全項目を一通り済ませた時点で――数名の『記録なし』がでたものの――時計の針は12時25分をさす。 1〜3組をまとめて体育館中央に集合させ、その場で全体に号令をかけ、12号教官は解散の指示をだした。午前最後の4限終了まで残り10分という、ピッタリな時間配分だ。 この辺りは素直に12号教官の差配に感謝するし、見習いたい。 

 私は2組に『教室についてくるよう』とだけ声をかけ、場に背をむけて体育館をあとにする。

 生徒は疲弊しているだろうに、『ハイ!!』と大声で返答し、すぐに私についてきた。 手を肩までふり、足は太ももが床から水平になるまで上げ、顎をひいて背筋をそらし、懸命に身体をキビキビ動かす。 一糸乱れぬ行進とは到底いえないが、4時間ぶっ通しで測定した後ということを考慮すれば、決してだらしない動きではない。 それでも私は、

『もっと足をあげなさい』

 と声をかけ、先頭の22番にビンタを見舞う。 手加減をするわけがなく、パァンという小気味よい響きが廊下に木霊し、

『ハイ! インチツの奥で理解します!』

 たんなる『ハイ』では終わらない、2組に躾けた私好みの返事を久しぶりに確認するのだった。


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