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真田拾誘翅(さなだじゅうゆうし)
【歴史物 官能小説】

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-2

「よいかな、久乃。今は男に攻められて陶然となるのも致し方ない。されど、徳川方を相手にする時はそうもしておられぬぞ」

「……徳川方……でございますか?」

「さよう。幕府の体勢を着々と固めつつある家康には優れた家臣が多いが、表だった武辺者の他に、陰で動く者どもがいる」

「それは?」

「伊賀者(忍者)じゃよ」

「徳川の伊賀者……。それをまとめているのは、たしか服部家の三代目、服部半蔵正就」

「房事のあとじゃというのに、久乃の頭脳は明晰よのう」

「そんな……」

「しかし、服部半蔵正就は表向きの頭領。きゃつは権力志向が強いだけのぼんくら。伊賀者の真の頭領は他にいる」

「それは?」

「今は滅びし武田家に仕えた忍びの者の末裔、高坂八魔多(こうさかやまた)。身の丈六尺(六尺褌の長さと同じで約228cm)の大男。剛力なのは言うをまたず、巨躯なのに俊敏、目方があるはずなのに音もなく天井裏を歩く」

「さような伊賀者がいるのですか……」

「恐ろしき相手よ。……しかし、久乃をはじめ真田の傀儡女たちが留意すべきは、やつの膂力や忍びの技ではない」

「と申しますと?」

「高坂八魔多の女を籠絡する所行こそまことに恐ろしい。やつの魔羅は肘から先の腕ほどもある巨根。加えて、やつの精力は尋常ならず、吐精しても即座に鎌首をもたげ、それが八度(やたび)も続くという」

「そんな……」

「それゆえ、高坂八魔多の通り名は八岐大蛇(やまたのおろち)。やつの手にかかったら、真田随一のくノ一、千夜ですら一介の女に成り果ててしまうであろう。つまり、恐るべき性戯によって際限なく逝きを繰り返し、だらしなく開いた女陰と同じように心も開いてしまい、聞かれるがまま当家の秘密をことごとく漏らしてしまうであろう」

「…………恐ろしや」

上気していた久乃の顔から血の気が引き始めた。

「そんな化け物が相手ゆえ、わしや幸村は久乃たちを鍛えておるのじゃ。ゆくゆくは高坂八魔多と閨での決闘を迎える傀儡女がおぬしらの中から出るであろう。その折に敗れぬことのなきよう、若いうちから開(ぼぼ)の鍛錬をな……」

「しかし、早喜の兄者である佐助殿は草の者としての腕が最近、とみに上がったと聞き及びまする。佐助殿が高坂八魔多を成敗してさえくれれば……」

「もちろん、佐助や才蔵に高坂の首は狙わせておる。しかし、これが一朝一夕にはうまくゆかぬのじゃ。伊賀者の陰の頭領は非常に用心深く、所在がなかなかつかめぬからのう」

「……分かりました。私、励みます。高坂八魔多の魔手にかかろうとも負けぬ女になりまする」

「その意気や良し。……じゃが、おぬしは性の鍛錬のいろはの『い』……いや、『ろ』に到達したに過ぎん。先はまだ長い。焦ることはないぞ」

「いいえ。鍛錬を積みまする。……もっと鍛えてくださいませ!」

「そう言われても、わしは年じゃ。今宵はもう勃たぬ」

「あ…………」

赤面し、うつむく久乃の丸い肩に、昌幸は優しく手を添えてやった。


 真田十勇士の中に槍の名手である由利鎌之助という男がいる。彼は昌幸の命(めい)で江戸に赴き、槍の道場を開きながら家康の動きを探っていた。鎌之助には年の離れた妹が九度山におり、名を由莉(ゆり)と言った。姓とつなげれば由利由莉となり、仲間の少女らから「ゆりゆり〜、ゆるゆる〜。開(ぼぼ)ゆるゆる〜」と女陰の締まりの悪さをからかわれていたが、そのじつ、由莉は三好稀代・伊代姉妹に次ぐ万力開(まんりきぼぼ)の持ち主だった。しかし、せっかく締まりのよい女陰を有しながら、由莉はその長所を遺憾なく発揮することはまれだった。
 彼女は男よりも女を相手にするほうが性に合っていたのである。
 毛深く脂ぎった男に興奮する女がいるが、由莉は毛の少ない優男のほうがよかったし、もっと好きなのは柔肌の同性だった。

「音夢(ねむ)、ちょっとおいで」

十一歳の由莉は一つ年下の音夢を川辺で見つけると呼びつけ、手を引き、水車小屋に連れ込む。
 真田十勇士の一人で水練や舟の扱いに長けた根津甚八を父に持つ音夢は、じつにおっとりしており、警戒心も希薄なので、下心見え見えでにんまりしている由莉にも平気で付いてゆき、同性好きの少女の毒牙にかかる。

「音夢、気持ちいいことしてあげるね」

水車小屋の狭く薄暗い中で、音夢は着物を脱がされ、そのすべすべした肌をまさぐられる。

「音夢の乳首は綺麗だねえ。淡い桃色で、吸い付きたくなっちゃうよ」

言葉だけでは終わらずに、乳首を唇に含む。そして吸う。吸い回す。舐める。舐め回す。

「由莉姉(ねえ)、だめぇ……。くすぐったいよう」

可愛い声を耳にすると由莉はなおも興奮し、さらに乳首を吸い立てる。同時に手を音夢の下腹部に持ってゆく。
 陰毛の生えそめし陰阜を撫で、色素沈着など一切ない綺麗な秘唇に指を這わすと、音夢はまたも可愛い声で鳴き、身体を震わせる。
 あとはもう由莉のなすがままであった。秘壺に指を入れられ、くすぐられ、トロリとしたものを掻き出された。さらには股間に顔を入れられ、舌で肉芽を弄ばれ、吸われ、ねぶられ、

「っ…………くううぅ〜〜〜…………」

あそこが濡れそぼり気持ちよさが頂点に達するまで攻められた。
 水車小屋の壁の隙間から差し込む日の光。それに浮かぶ音夢の桃色の肌、上気した顔。少女にひと刷毛の妖艶さが加わり、由莉はぞくぞくしながら見つめていた。

『ああ……。やっぱり、あたいは男よりも女が好きだ……』

由莉は心の中でつぶやくのだった。


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