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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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L-8

わりかし家が近い4人なので、乗り換えもずっと一緒だった。
3駅先で海斗、2駅先で洋平が降りる。
大介とは最寄り駅は一緒だ。
「大丈夫か?」
「うん…」
「大丈夫じゃなさそーだけど」
途切れ途切れの会話。
最寄り駅に着き、そこからはタクシーで自宅まで向かった。
着いたのは15時近くだった。
「荷物持ってくから」
そう言って大介は部屋までトランクを運んでくれた。
大介がこの家に足を踏み入れるのは引っ越しの時以来だ。
陽向は「散らかってるけど…」と言った。
「早く寝ろよばーか。そんなん気にしてる場合じゃないっしょ」
「ゴメン」
陽向はそのままベッドルームまで行き、服のまま布団に倒れ込んだ。
脈打つのと同時に頭がズキズキと痛む。
「大介…」
「ん?」
「冷蔵庫に麦茶あるから、取って」
「はいよ」
大介は陽向に体温計を渡した後部屋から出た。
測れってことか。
少し遠くから「グラス借りるよ」と言う声が聞こえる。
返事をする間もなく大介は麦茶を丁寧にそれに注いだ。
間もなくしてベッドルームまで足を運び「はい」と、渡してくれる。
「ありがと」
「いーえ」
大介は陽向に背を向けるようにして地べたに座った。
白いダボダボのTシャツの下に黒のロンT。
ジーパンは高校の頃から「育ててる」らしい、いいトコのジーパンらしい。
だいぶ色落ちしている。
ベルトもなかなかシンプルでカッコ良くて、きっと湊とファッションの話も合うんだろーなー…なんて思う。
そして、後ろで束ねた髪がなんか大介らしくなくて、なんだか面白くて笑みが零れる。
いつもはわりとスパイラルパーマか出来損ないのアシメなのに。
「何笑ってんの」
いつもと同じ少し高くて優しい声。
楽しそうに笑う横顔。
優しい眼。
外人みたいな鼻。
大介は昔からずっと変わらない。
いつも楽しそうで誰にでも優しくて、素直で真っ直ぐ。
そんな人になりたいってずっと思ってた。

−−−ピピピ

体温計が鳴った。
「見せて」
「やだ!」
「なんでだよ!」
「自分で見るからいい!」
チラッと見た時、38℃台だったのは確かだった。
明日仕事なのに…と萎える。
ガッカリした瞬間、大介に体温計を奪われる。
「38.8℃って……」
「……」
「北海道そんな寒かったか?!」
「ばか!」
本当にバカなんだよ、大介は。
すごく優しいけど。
陽向は毛布に包まって壁の方を向いた。
「陽向ー」
「……」
「ウソだよ」
そう言って大介は後ろから優しく抱き締めてくれた。
一瞬にして鼓動が荒ぶる。
「頑張りすぎだよ」
「大介…」
「お前、頑張りすぎなんだよ。いつも楽しそうにしてっけどさ、無理なら無理って言えよ。俺らは土日が休みだし、残業なんてほとんどない。休ませてくれって言ったら休める。そーゆー環境なんだ。でもお前は違うだろ。人の命預かって、それだけでも疲れんのに…それでもこーやって予定合わせてくれてさ。俺ら、お前がいなきゃ成り立たないと思ってる。でも、お前が一番忙しくてこんな体調まで崩して……」
「陽向、こっち向いて」
ゆっくり向くと、思い切り腕を引っ張られた。
「いっ……」
目の前に大介の顔があってビックリする。
大介は、泣きそうな顔をしていた。
両手で頬を包まれる。
陽向は虚ろな目で大介を見た。
「そんな陽向の顔見たくなかったかも」
「なんで…」
「可愛いのに、具合悪そーなんだもん」
「今日は仕方ないよ」
ふにゃっと笑うと、突然抱き締められた。
「ぁっ…!」
「俺ね、やっぱり陽向のことが好き。ずっと前から。分かってるでしょ?どんな女と付き合っても、陽向みたいに真っ直ぐで素直で、誰にでも優しいやつって、いない」
「……」
「五十嵐がいるのは分かってる。分かってるけど、こーしたくなる」
陽向は黙ったままだった。
でも、大介の手はギュッと握っていた。
心の何処かで、懐かしい、愛おしい感情があったのかもしれない。
「陽向」
「ん?」
「具合悪いのにごめんな」
申し訳なさそうに言い、立ち上がった大介を目で追う。
「もう帰るね。なんか欲しいモンあるなら買ってくるけど」
冷静を装っているのだろう。
恥ずかしそうに微笑んで「何もないなら帰る」と言った。
「もうちょっと……」
「え?」
「もうちょっとだけ、ここにいて」
昔の名残かな。
愛おしさを感じてしまう。

本当は、好きだったから。
告白されてフったけど、好きだった。
ただ、別れた時に今まで通りの友達じゃなくなるんじゃないかって考えるのが怖かったから。
だから「友達でいて」って泣きながら言った。
それほど好きだった。
大介のことが。
本当に大好きだった。
今でもきっと、心の奥底ではそう思ってるのかもしれない…。


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