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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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K-1

とんでもない罵声が耳を劈く。
相手は今年入ってきた1年生の澄田さんだ。
「てめー、こんなん分からねーで患者受け持ってんの?帰れ」
「瀬戸さん!そーゆー言い方ないですよ!」
「は?フォローのテメーが聞いて送った報告なんだろ?ざけんな。…つーか、テメーにも言いたいこといっぱいある」
「え……」
今年になってから、病院内での教育体制がガラッと変わった。
『新人は出来ないのが当たり前。それを支え、学ばせるのがスタッフの役目だ。頭ごなしに叱るのは間違っている。その人の能力や性格、看護師としての生き方を尊重しなさい』
今まで、ダメなものはダメ、ルールに反する者は処罰……そんな時代だった。
でも、今は違う。
人材を求めるようになってから、辞めさせない環境を作るために世の中が変わった。

でも……。

「その言い方ないってのは、俺のこと否定してるよーなモンなんだけど」
勤務終了後、陽向は処置室で瀬戸からなんやかんや言われていた。
今日1日、澄田をフォローして微力ながらも頑張ったつもりだ。
ペアは昨年同様同じチームの高橋だったが、何故か2年目のペーペーな自分にフォローを任されていた。
澄田の学びになったかどうかは分からない。
いや、学びになっていないことの方が多いかもしれない…。
「お前、あいつにどんなフォローしてやった?」
「……」
「報告ん時も全然見当違いな事言うし、業務は遅ぇーし、お前今日何してたわけ?!」
「それは…」
「なんだよ」
瀬戸とあの一件があってから、係の仕事でしか関わりがなかった。
関わりがないといっても「おはよう」や「お疲れ」と言葉を交わすことは何度かあったが、なんともぎこちない感じだったことは否めない。
年度が変わってから、こうして直接的に罵声を浴びせられるのは初めてだし、無性にイラつくしなんだか……とりあえずムカつく。
「ってゆーか、何にもわからない1年目にあんなこと言ったって、分かるわけないじゃないですか!」
「勉強しろってことだよ!」
「そんぐらい分かってます!でも何が分かんないのも分かんないのが最初でしょ?!その気持ち、分からないんですか?」
「は」
「今日言われて全部調べ切れるわけないじゃん!あんな立て続けに言われたって、分かんないものは分かんないし!」
「だったら、『ここまでは調べました。でも、これとこれは調べ切れなかったんで、明日報告します』でよくね?」
「はぁ?!でもそれでも瀬戸さんは文句言うんでしょ?!」
「ははっ、分かってるね、その通り」
「だからそれが嫌なの!」
「つーか、さっきからお前、俺にタメ語なの分かってる?」
瀬戸はニヤニヤしながら陽向を見た。
「えっ?!うそ……スミマセン」
「そーゆートコがアホなんだよお前は」
頭をガシッと掴まれる。
「痛いっ!」
「本当にあぶねーヤツだな。五十嵐が心配すんのも分かるわ」
「危なくないっ!」
怒り任せに頭を掴まれた腕を払う。
「そーゆートコ」
「なんなんですか…」
「そーやってタメ口きいたり、強がっちゃうトコに男は弱いの。分かる?」
「バカにしてるんですか?!」
「あー、ホントにウザいそーゆー感じ。お前に警告してやってんの。聞け」
瀬戸は陽向の肩を掴み、壁に押し付けた。
「…っ!!」
「バカ。なんもしねーよ。聞けっつってんの」
「…はい」
「お前みてーなアホで顔も可愛くて、酔っ払ってヘマしちゃうよーな奴にコロッと気がいっちゃうのが男なの。だから、飲み会じゃぜってー引っ掛けられっからな。フラフラついてくんじゃねーぞ」
真顔で言われたが、陽向はぷっと吹き出してしまった。
「なんでそんな真顔なんですか?!」
「お前ホントにバカだな!」
「なんで!」
「あー…もーっ。1年目教育するより疲れる」
「意味わかんない!」
「あのな…とにかく…」
瀬戸は陽向の頭を撫でて「研修医は気を付けろな。俺も見張っとくけど」と言った。
そういえば今日は新しく配属された医師の歓迎会だ。
そのことを言っているのか?
緊張して飲めないと思っていたからこの飲み会はだいぶノーマークだった。
そもそも仕事が終わるか分からない。



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