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セクハラ研修会
【OL/お姉さん 官能小説】

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第三話-1

「弊社のセクハラは、大きく5つの段階に分類されております。」

スクリーンにテロップが表示されていくと同時に
ウグイス嬢の如し流麗な声のナレーションが
それを読み上げていく。

しかし、その内容は極めて非現実的であり
かえって美しい声とのギャップで、より異質な印象を皆に与えた。

「順に列挙していきますと

1:モーニングセクハラ
2:お茶汲みセクハラ
3:ランチセクハラ
4:アフタヌーンセクハラ
5:アフターファイブセクハラ

以上が弊社で奨励されている主なセクハラになります。」

「……ふ、ふざけてるわ。」

如月は腕組みしつつ、足でコツコツと床を踏み鳴らしながら
苛立ちと嫌悪、そして困惑を如実に表す。

彼女ほど露骨ではないにしろ、それは他の面々も同様で
今自分が置かれている状況が未だ完全には信じられないまま
眉を顰め、不潔なものを見るように表情をしかめながら
スクリーンへ無言で視線を注いでいた。

「それではまず、モーニングセクハラの様子を抜粋してご覧致きましょう。」

テロップが消えると、映像が暗転して
どうやらオフィスの一角らしき場所が映し出された。
整然と並べられたデスク。
その上にはPCの他に書類やファイルが雑然と積み上げられている。

まだ出社していない人間が多いのか、人の気配はまばら。
チラホラ姿の見える社員たちも、大きく伸びをしたり
出社途中で購入したらしきファストフードにかぶり付いたりと
各々が気ままに過ごし、静寂が室内を包んでいる。

「おはようございます。」

そこへ、女性社員が新たに二人連れ立って入室してきた。
互いに特段変わった様子はなく、きちっと制服を着こなし
それぞれ茶色がかったボブカットと、黒いロングヘアをなびかせた二人組。

しかし、二人に対する周囲の反応は全く異なるものだった。

「おはようございます。」「おはよう。」「おーっす。」

茶髪の女性には、その場にいた面々も
変哲の無い挨拶を次々と返していくのだが。

黒髪の女性の方には、男達は一様に口元を緩ませ
目尻を垂らし、鼻の下を伸ばした下品な表情で近寄っていくと

「おはよー。どうしたの?何か目の下にクマがあるけど、寝不足?」
「わかった、昨日も夜遅くまで、ズッコンバッコン!ってSEXしまくってたんでしょ?」
「キミ、スケベそうだもんね〜。自分から激しい腰フリして、彼氏の方をヒィヒィ言わせたんじゃない?」
「もしかすると、色んな男のチンポを一度に咥えまくってたりして!」

思わず耳を塞ぎたくなる様な、下劣極まりない言葉の数々を
一斉射撃の様に次々と浴びせはじめた。
モラルを持った社会人ならば、プライベートですら口にするのを憚られる語彙であるのに
公共の空間、それも職場のオフィスで、女性に向かって容赦なく当然のように。

「いやぁっ!」

実際、スクリーンを見ていた多くの新人OL達は
嫌悪と拒絶の悲鳴を漏らし、目を背けて耳を塞ぐ者が大勢。

「げ、ゲスな奴ら!」

如月は映し出されている男達を睨みつけて
歯を食いしばり、ドス黒い憤怒と憎悪の感情を湧きあがらせながら
思わず大声で叫んだ。

藤堂の方も同様に、激しい怒りを覚えつつ
眼鏡の奥で、鋭い眼光から突き刺すような視線を向けている。
如月と異なり、大きく感情を表現する事は無いが、小さく呟いた。

「これだからイヤなのよ……!
こんな奴らに大きな顔されて、見下されたくないから、私は……。」

その言葉はある種、この男達に対してというよりも
世の男と女の関係を重ね合わせて罵倒しているような口調。

藤堂のプライドの高さと、自身の学歴に対する固執は
男に負けない、女だからと舐められたくない
といった、性差に対しての過剰な競争心も大きい。

社会生活を送る上で、重役など上の立場になっている人間の割合は
まだまだ圧倒的に男が多い。そんな現状に、藤堂は不満を抱きつつ
勉学に励んできたのだ。

そんな新人OLたちへ対して、グラマー女は
叱責の言葉を投げかけた。


「皆さん、目を背けてはいけません、耳を塞いでもいけません。
これがセクハラ枠で採用された社員に対しての日常的挨拶なのです。

これから皆さんは、毎日こういった形で一般社員の方々から
性差別的な言葉をかけて頂き、それに気持ちよく応じて
相手の心理状態を高揚させる。それが職務内容なのですよ。

日々彼らが溜め込んでいるストレスのはけ口として機能し
鬱積を解消させる事で、仕事の能率を高め、潤滑なコミュニケーションを築く。
これがセクハラ枠採用者の存在理由です。」


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