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初恋はインパクトとともに
【青春 恋愛小説】

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初恋はインパクトとともに ♯5/魔法の言葉-4

「ついて来い!鍛えなおしてやる!」
自分でもどうしてこんな事を口走ったのか分からない。分からないんだが…何でだろうか?
とにかく彼の『すげぇ』が嬉しくって、私はなぜだか駆け出していた。
うん、私もバカだ。

「ま、待てって!」

律儀なのか、やはりバカなのか、アカネは後をついて来た……二人ともバカなんだな。

私は走る…
荷物は背負ったままだが、さして気にはならない。
アカネも走る…
私の後方をゼィハァゼィハァ言いながらもついて来る。
(根性無しではなかったかな?)
いつの間にか陽はどっぷりと暮れ、しばらくして町は寝静まり、またしばらくして道を照らすのは街灯だけとなっても…私たちは走り続けていた。アカネは遥か後方を走って…いや、歩いているため、たまに速度を緩めながらも先を進む……並んで走りたいなと思いながら…追いついてほしいなと思いながら。


上り下りの繰り返し…海都市は坂の多い町だ。トレーニングにはもってこいなのだが…何時間も走りつづければ、そら私とて疲れる。
「はぁはぁ…アカネぇ…もう少しだぞ…」
何がもう少しか分からなかったが、私も流石に限界が近かった…が、休んだり速度を緩めたりしながらだが、アカネは私について来た…ついて来てくれたんだ。
ちょっと…いや、かなり見直した。

坂を登る…登る…
「くっそ〜府中の坂よりすごいんじゃないかぁ〜いや、これは中山か?中山なのかぁ〜〜」
アカネは訳分からん言葉を発していた。まあ気持ちは分からなくもないけどさ……
私たちは横に並び坂を登る…辺りは朝靄につつまれて、空は漆黒から濃紺、濃紺から青へと代わる変わる……空って赤くなったり青くなったり白くなったり黒くなったり。何だか不思議だな…とか、何だかそんな思案しても答えの見つけられない考えのような事を頭にめぐらせながらも歩き続けていた。

この気持ちに、この考えには答えがあるのだろうか?胸が高鳴ってはいるが、どこか和やかで、すげぇ心地良い…そんな感覚に。

辺りが明るさを取り戻すにつれ、彼のほうを振り返ることができなくなっていた。(ただ単に私も結構つらいだけなんだが)気が付くと、いつの間にかアカネの方が先を行っている…生意気だアカネのくせに。でもやはりどこか嬉しかったり腹立たしかったり曖昧で曖昧で曖昧だ……

坂を上りきるとちょっとした段差が…
「ほらアキラ…」
彼が手を差し出してくれる…どうしたものかと思った。先ほどの思惑が頭に浮かんだ…浮かんだが…
「うん。」
私はその手を取り、彼の横に並ぶ……
「うわぁ…キレイだ…」
気づけば、ホント素直にそんな感想を述べていた。

僕らを包んでいた朝靄は晴れて…辺りはブルーのコントラストにつつまれる。
そして眼下に広がっている統一感のある町並みが朝陽に照らされていく。大きな時計台が朝陽でキラキラ輝いて見えて、その先には…空の淡い青とは違うキレイな青が広がっていた……

「キレイだよな…」「うん。」
「疲れたよな…」「うん。」
「でも来て良かったよな…」「うん。」
「また来ような……(二人で)」
私たちは手を握り続けていることも忘れ、そんなやりとりを繰り返していた……
「うん、また来よう……(二人で)」
彼の横顔を覗き見る…彼の瞳はいつもより見開かれ、キラキラ輝いていた。


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