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調教学園物語
【調教 官能小説】

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〜 木曜日・補習 〜-3

 『谷間から伸びた器具』を使う『プログラムB』も、内容は酷いものだった。 器具は電気で振動しており、受講者の股間の高さより若干低めに設定されている。 受講者は手を頭の後ろで組み、足を広げて器具を自分の持ち物にあてがって感じる部分に振動をうける。 やがて胎内が熱くなり、絶頂直前の温度になった瞬間からが本番だ。 プログラムBでは、達することは許されない。 あくまで達する直前の状態を一定時間維持しなければならない。 あと一息、もう一歩で絶頂するところまで自分を高めた上で、イキたい生理的欲求に抗い、理性をフル回転させて昂ぶりを沈め、決して首輪を光らせてはならないという。

 ならば器具から股間を離し、興奮を冷ませばいいと思うが、そうは問屋が卸さない。 興奮が引いて体温が一定値より下がると、その時点で補習は失敗と見做される。 それまで継続した時間はすべてリセットとなり、再び絶頂寸前まで昂ぶってから補習が再開されるのだ。 これはつい刺激をコントロールしそこなってイッてしまった場合も同様という。 

 一定時間が具体的に何分なのか、もしかしたら何時間なのかは教えてくれなかった。 ただ、仮に私がプログラムBを受講するとしたら、きっと5分も我慢できないだろう。 今朝だけで何十回と達したが、絶頂の予感を感じてからは只々快感に身を委ねていた。 あれだけマスターベーション――私達に許された表現でいうところの『マンズリ』――に抵抗を示しつつも、いざ絶頂の気配が漂うと、堪え性なく身勝手な嬌声を挙げていた。 それを抑えるだけでも大変なのに、興奮を冷ましてはいけないなんて、一体私にどうしろというのか。 

 頭では何となく分かる。 マスターベーションに全く違う意味を与えているのだ。 私たちにとって人前でイッて愛液をピュッピュッと吹くことを、恥ずかしいとか情けないとかいう以前に、達成するべきものに昇華させようという。 逆にいえば、私たちは必死であらゆる角度からマスターベーションに取り組むことが当然なほど、みじめで無様な存在でしかない。 真剣にマスターベーションに取り組めば取り組むほど、私たちは知らないうちに自分の身分というか、存在を辱めることになる。 そして、真剣に取りくまずして完了できるような温い補習ではなく、完了できなければその時点で学園の生が終わりを告げるということだ。

 ゴクリ。 隣で22番が喉を鳴らした。 私と21番はカラカラに乾いてしまい、えづくことしかできなかった。

 最後に残った『ヘッドギア』がプログラムCの主役だった。 仕組みはいたってシンプルで、低周波を直接脳に浴びせ、強制的に絶頂の信号を脳に起こすのだとか。 ヒトの感情を機械で操れるなんて信じられないけれど、学園が出来るというのだから、きっと出来てしまうんだろう。 
 
 天井から伸びたパイプの先にカメラがついている。 パイプは天井を起点に上下左右に動くようになっている。 ヘッドギアを被ると、約10秒ごとに強制絶頂されるのだが、絶頂のタイミングでカメラが自動でシャッターを切る。 受講生は常にカメラに顔をむけ、絶頂の瞬間に『満面の笑顔』でカメラに『ポーズ』を取らなければならない。 つまり、最も恥ずかしい瞬間を最高の表情で演出するわけだ。 

 顔が苦痛に歪んでいたり、カメラから視線を外していたり、ポーズが決まっていなければ、カメラが自動でNGをだす。 するとまた最初からやり直し。 『連続』して『100枚』の写真を撮ったところで補習は合格になる。 換言すれば『連続で100回イキながら、笑顔のポーズで写真を撮り続ける』ことでしか、連綿と続く絶頂から解放される術がないのだ。

 何か質問はないか、と補号教官に訊かれたけれど、誰も何もいえなかった。 補習対象になった時点で私たちは人語を禁じられているため、質問できないというのもある。 けれどそれ以上に、質問するのが怖かった。

 『途中で写真に失敗すればどうなるか』
 
 答えなんて聞きたくない。 もしも『もう一度最初からやり直し』と言われたなら、私はどうすればいいんだろう? もしも『99回連続で写真をとったのに、最後に失敗』してしまったら。 また最初から『100回連続』なんて絶対に無理だ。 じゃあ、無理なら、どうなるのか。 学園の補習のことだ。 きっと私の心や体なんて斟酌せず、延々絶頂を与え続ける。 とすると、もう対応できなくなった私は、その場に蹲るしかないんじゃないだろうか。 意識を失ってしまえば、二度と戻ってこれないだろう。 つまり……一発で『100回連続』を達成できなければ、私を待つ運命は一つしかない。 

 説明を終えた補号教官は、A・B・Cのどれかを自分で選ぶように、と言った。 躊躇い、顔を見合わせる私達。 しばらくして3人の視線が揃った。 どれもこれも非道いけれど、アレなら可能性がゼロじゃない気がした。

「「……」」

 選んだ項目はプログラムC。 私たちは震えながらヘッドギアを被った。 四つん這いを止め、その場で直立するよう指示される。 重くて冷たい、幅広なギア。 顎できつく締められたバンドが喉まで喰い込む。 

 ウィィン、ウィィン、ウィィン。

 すぐに天井からおりてくるカメラ。 真正面からレンズ越しに私の瞳を覗きこむ機械に、私の運命がかかっている。 恥ずかしい、悔しい、辛い、哀しい。 ミジメで、憐れで、不様で、淫ら。 それでも構わない。 私がイク瞬間を笑顔で飾り、それで生きて帰れるなら、私にとって微笑んで絶頂することにこそ価値がある。

 ウィン、ウィィン。

 カメラのレンズが伸び縮みする。 おそらく涙があふれた私の顔にピントを合わせているんだろう。 ソッと目元をぬぐい、私はレンズの奥を見つめる。 レンズに映った私の表情は、とびっきりの、そしてとっておきの作り笑顔だった。


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