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耳にキス、キス、キス。
【女性向け 官能小説】

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理由-8

「そうだね、僕もびっくりした。沙保さんが出ようとしたことにもびっくりしたよ」
「ごめん……気が動転してた」
「僕、たまたま泊まっててよかったよ。あいつの彼女からもその後何か連絡あった?」
「ううん。もともと、わたしが雅也と別れたあと菜里香から雅也と付き合うことになったって連絡があって──返事をしなかったんだけど──それからお互い気まずくて連絡しあうことがなくなって……この間会ったのだってほんとうに久しぶりだったから」

 そう言いながら、わたしは苦いものを噛み潰したときのような気持ちになった。
 頭の中に、あの日買った雨傘の色と柄が広がる。
 ガサガサとした音が一層大きくなった。大粒の雨が刺すように地面に降り注ぐような音。
 あのときの菜里香の顔を思い出す。あの歪んだ口元を。

 菜里香も雅也も遠い存在になってしまった。
 楽しかった頃が嘘みたいに遠ざかっていく。ふたりはもうわたしをあの頃のようには思っていない。

「そっか」

 ヒロキくんがわたしの傍にしゃがみ込んで言った。

「僕、明日もバイトのあとに泊まりに来ます。また来たら嫌だし、心配だから。いいよね?」
「うん──ありがとう。ほんとうにごめんなさい」
「沙保さんのことは僕が守るから。大丈夫だよ。それから、こんなことくらいで沙保さんのことを嫌いにならないからね」
「ヒロキくん……」

 鼻の奥がつうんと熱くなる。
 ヒロキくんがわたしの髪を撫でた。

 ヒロキくんはわたしを思ってくれている。
 菜里香のあのときの言葉に傷ついたわたしを雨の中から引き戻してくれた。
 ヒロキくんはストレートな言葉でわたしを必要としてくれる。どんなときでも、いつでも。
 わたしはヒロキくんを覗き込むように見ながら、ほんとうにごめんなさいと心から言った。

「もういいよ。じゃあさ、今から仲直りセックスでもしよっか」
「えっ」

 ヒロキくんがにやりと笑うと、わたしのルームウェアの中に手を入れて胸元をまさぐった。

「ちょ、ヒロキくん──こんなところで……」
「もしあいつが戻ってきたら聞かせられるじゃん」
「やだ、もう──ぁんっ」

 ヒロキくんがわたしの乳首をきゅっと摘んだ。
 ルームウェアとナイトブラがたくしあげられ、胸元が露わになる。
 ヒロキくんが両胸を寄せてベロベロと乳首を舐める。わたしはタオルをぎゅっと掴んで短い声をあげた。

「沙保さん……立って」

 ヒロキくんがわたしを立たせると、わたしの背後にまわって後ろからわたしの下着に右手を入れて言った。

「乳首を舐めただけなのに、もうこんなにトロトロ……」

 ヒロキくんが指で愛液をすくって蜜壷周辺に撫でるように塗りつけていく。
 頬がカッと熱くなった。

「こうやって触っていると、どんどん溢れてくるよ……。えっちな身体だなあ。ねえ、沙保さん」
「やだ……恥ずかしい」

 ゆっくりとヒロキくんの指が円を描くように動く。息があがる。
 ヒロキくんがわたしの耳を後ろから舐めた。

 ガサガサ音が遠ざかっていく。
 ヒロキくんが、音を消していく。

「はぁ……んっ──んんっ」


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