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〈熟肉の汁〉
【鬼畜 官能小説】

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〈快楽の源泉〉-1

『ママ、ただいま〜』

「は〜い、二人ともお帰りなさい」

『ただいま。お?もう体の具合は良くなったみたいだね?』


二人が帰宅した時には、もう夕飯の支度は始まっていた。
温かな味噌汁の香りや焼いた魚の匂いが食欲をそそらせる。
そして何よりも恭子の明るい表情が、二人の一番の喜びであった。


「お風呂も沸かしてるから、彩矢と入ってきたら?」

『そう?じゃあ俺達は先に入ってくるよ』


彩矢とは一緒に入浴出来なくされた恭子は、耕二に勧める形で其れから逃れた。
事態打開の先伸ばしにしかならないと知りながらも、しかし、今の恭子には其の手しか無かった。


(どうすれば良いの…?私は、どうすれば……)


焼き上がったカマスの一夜干しや、キャベツとプチトマトのサラダをテーブルに並べながら、恭子は明日からの自分を憂いていた。

あの天然パーマの男は、間違いなく翌朝には接触を試みるはず。

何と言えば断れるのか…?

いや、其れもだが、また脅迫者達から誘いの電話が来るかもしれない……。
いずれにしても、依然として未来を覆う闇は晴れ間すら見えず、恭子に哀しい作り笑顔を強いるばかりだ。


『あ〜、気持ち良かったぁ。彩矢、良いお風呂だったねえ?』

『うん!ママも早く入ってきてよ』

「ま…ママは先にシャワー浴びてたからいいの。さあ、夕御飯にしましょ」


親子三人は椅子に座り、作りたての夕御飯を囲んで食事を始めた。

耕二も彩矢も洗い立ての髪を輝かせ、お湯に紅潮した笑顔で夕飯を進めている。
既に髪が乾いている恭子とは対照的であった。


『あのねえ、きょう幼稚園でねえ、い〜っぱい折り紙作ったんだよ?』

「あら、とっても楽しそうねえ。彩矢が作った折り紙、ママ見てみたいなあ?」


掛け替えの無い時間の中に、冷酷な“憂鬱”は確実に存在している。
あの落書きをどうにかしなければ、あの刻まれた《烙印》を消さなければ、恭子は一生の間、その苦しみから逃れられない。
誰にも打ち明けられない秘密を背負わされた恭子は、蟻地獄のような塗炭の苦しみの最中から、逃れる術すら無かった。



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