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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-138

「う、うぅっ」

 びるびるびるっ―――………。

「ん、んあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――………!!!」
 生命の奔流を深いところで受け止めて、百合子も果てを越える。
果ての先にある世界では、真っ白な輝きを放ちながら超新星が瞬いていて、その中心から激しく根源の渦を巻き起こし、その様をはっきりと百合子の瞳に映していた。





 宿願は叶い、すぐに百合子は郷吉の子を身篭った。そして、数ヵ月後、無事に男児を出産した。この男児が、勇太郎の父・郷太郎である。
一児の父となった郷吉は益々仕事に精を出し、百合子はその溢れる愛情で郷太郎の養育に努めた。二人の大らかな愛情に支えられ、郷太郎は心身ともにすくすくと成長した。
そして、成人を迎えた郷太郎は、奇なるかな泉小路家に連なる商社に勤めだした。
事業家だった家系の血を濃く受け継いだものか、郷太郎はすぐにその才覚を発揮し、若くして責任のある立場を戴くようになった。
 郷吉は、郷太郎が自立したその頃に出版社を辞してフリーライターとなり、執筆の傍ら百合子との生活を堪能していた。静かで、幸せな時間がそこにはあった。
 そのうち、郷太郎も結婚をし、すぐに勇太郎が生まれた。
ところが、孫の誕生を誰より楽しみにし、そして喜んでいた百合子が、その年の暮れに病を得て、そのまま帰らぬ人となってしまったのだ。
最愛の人との突然の死別は、郷吉に大きな衝撃を与えた。
何をするでもなく塞ぎこんでいたある日、彼はとある雑誌にて、気になるものを見つけた。それは、妻と死別した彼を心配して訪問してきた出版社時代の悪友の忘れ物で、官能小説を扱った雑誌であった。
その新人原稿募集の審査員の欄に、<生方郷一>という名を見つけたのである。
 郷一……郷市。彼はすぐに、数十年前に安堂家から姿を消した叔父・郷市を思い出した。そこで、何らかのアクションを起こそうと、みずから筆を取り、一篇の小説を書き上げて応募したのである。その筆名は“安納郷市”。叔父が関わりあっているのならば、きっと反応があるはずだ。そう思っていた。
 だが、それはなかった。生方郷一は、まったくの別人だったのである。その名前に過敏に反応してしまった郷吉の、はっきりいえば“勘違い”だったわけだ。
ところが、話はそれで終わらない。なんと、その小説が採用されたのである。
雑誌社から、定期の執筆依頼がくるようになり、郷吉はそれを容れて思いがけず叔父と同じ官能小説家として第二の人生を歩むことになった。
同じ道を歩んでいれば、いつかは接点があるかもしれない―――――そんな考えを抱きながら。
実績と人気が着実に伸びていく中で、しかし、大きな不幸が彼に襲いかかった。
 息子夫妻の、突然の事故死。
それでも、郷吉はすぐに悲しみを振り払い、言葉も覚えない先に両親に先立たれた勇太郎を引き取り、彼の養育に情熱を注いだ。
孫の勇太郎は、生まれてすぐに両親を喪うという不幸を抱えながら、そんな暗さを微塵も感じさせない、大きな男に成長しつつある。それは、養父となった郷吉にとって嬉しいことであり、頼もしいことであり、そして、楽しみなことであった。………』





「それからのワシの生きがいが、勇太郎じゃったよ」
「………」
「ふう、話がなごうなってしまったか?」
 弥生は静かに首を振った。
「きっと、幸せだったでしょうね」
「ん?」
「百合子さん……」
「………」
 遠い目をする郷吉。弥生は、その透き通るような瞳に、彼の亡妻への愛の深さを知った。
「今度は、私の番ですねぇ……」
「………」
 一番、訊きたかったことだ。安堂家の庇護を自ら放り投げて以降、叔父の郷市や、目の前にいるかつての想い人・弥生がどんな人生を歩んできたのか。
「郷ちゃん……そんなに長い話ではないけど……少し、覚悟はしておくれ……」
 決意を秘めた瞳は、これからの弥生の告白が、少なからず衝撃を生み出すものだということを、言葉と共に伝えていた。


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