第26話-2
バスの出発時間になり、次々と社員がバスに乗り込んでいく。
「さぁ、奥さんは私の隣だ。近藤君、席は行きと同じでいいだろう?」
「はい、もちろんです。」
天野にそう言われれば、菜穂に断る事はできない。
菜穂は最前列の天野と隣の席へ、そして智明はそこから離れた一番後ろの席に座らされた。
そんなバスの中で菜穂はもう早く帰りたい、早く家に帰って休みたい≠ニ、そればかりを考えていた。
身体だけではなく、菜穂の心は疲れ切っていたのだ。
「ちょっと運転手さん、ひざ掛けはありますか?」
「はいはい、ありますよ、どうぞ。」
天野は出発前、運転手からひざ掛けを受け取ると、それを菜穂に渡してきた。
「奥さん、これを。」
「ぇ……は、はい、ありがとうございます。」
天野がどうしてひざ掛けを渡してきたのか、その意図も分からないまま、菜穂は素直にそれを受け取った。
そして丁度席に座った自分の下半身が隠れるようにひざ掛けをかけた菜穂。
しかしバスが走り出してから数分が経ったところで、菜穂はやっとその意図を理解した。
「……あっ……」
隣に座っている天野の手がゆっくりとひざ掛けの中に入ってきて、菜穂の下半身を触り始めたのだ。