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まことの筥
【二次創作 官能小説】

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まことの筥-7

 要は心の底から受け入れがたいと思っているのだ、と姫君は思った。あれほどの美男子はそうはいないのだが、もらう文の言の葉から侍従には受け入れがたい何かを感じるのだろう。それとも侍従には、恋いて止まない男が別にいるのかもしれない――。
 本人が、言いようがない、と言っているのだからこれ以上質しても仕方がなかった。それから姫君は侍従の生い立ちや、向こうの対のこと、姫君の知らぬ時平のことなどを話した。侍従は何事にも居姿を崩さず、相変わらず凛とした美しさを保ったまま、しかし時折姫君とともに可笑しそうに笑うあいだは、近寄りがたい冷徹さを溶かして花が咲きこぼれるように華やいでいた。
 この女房ともっと一緒にいたい、この人の美しさを常に傍に置いていたい。美しい平中にはそれは叶わぬが自分ならできる。仕える本院の姫君の命とあらば断れぬ。



 唐崎の伝授は夜、塗籠の中に入って錠を差し、外へは漏れぬようにして行われていた。百聞不如一見、この故事になぞらえるまでもなく、唐崎は言葉でか絵でか説くよりも実際に見せるほうが姫君の呑み込みが早いと考えていた。
 若い方の付女房の血縁に、岩瀬と言われる男がいた。血縁といっても父方の遠縁で身分賤しかったが、女房のつてで本院の雑夫を務めていた。
 塗籠の中の事は決して外に漏らすな。本院の対の中に入り姫君のために働けることじたい、お前にとってはこの上ない幸運だと思え。もし、漏らしたが最後、どれだけ人を雇ってでもお前を括り殺しにいく。
 三人の女房は岩瀬に詰め寄って言い置いた。この岩瀬という男は教養が無いから言われていることの殆どが理解できず、へへ、と下卑た笑いを浮かべ、わかっておりますよ、と言った。唐崎は頭の足らなそうな岩瀬に不安を憶えたが、他に使える男がいなかった。
「姫様ご覧なさいませ。……ですが、決して触ってはなりませぬ」
 塗籠に入ると唐崎が衣を脱ぎ始める。岩瀬もまた、恥ずかしゅうございますなぁ、と顔を邪淫に緩めながら大股を開き白大口を捲った隙間から肉竿を曝け出した。四人の女の前で見せた最初は、緊張に黒ずんだ蕾となっているが、唐崎が手を伸ばし、
「そなたは動いてはならぬ。決して変な気は起こすな」
 と睨みつけながら握った指の中で揉みほぐされると、忽ち力強く屹立して二人の女房に溜息を漏らさせた。男に抱かれたことはあっても、浮かぶ怒張に血潮を漲らせている肉柱を明るい場所で見たことがなかった女房たちは、岩瀬の野卑を蔑ずみながらも上気して、脚の間に異質に聳り立つ雄茎から目を逸らさなかった。
 時平のような公達ならいざしらず、賤しく汚らしい岩瀬のものだ。唐崎は手の中に握るあまりの汚らしさに、とてもそのまま含んだり舌を這わせたくはないから、水を取らせた布で何度も拭いた。いつ塗籠の中に呼んでも岩瀬の傘には垢じみた穢物がこびりついていて、期待で漏らした汁が溶け出し、たまらない臭いを漂わせる。そこを愛する決心がつけられるまで丹念に拭ってやっと唐崎は姫君に男が喜ぶ愛し方を説きつつ唇を押し当てることができた。あれだけ拭っても強い臭気が鼻を衝く。唐崎は顔を曇らせつつも、内心ではこのような汚らしい男を愛さねばならぬ自分に妖しい昂奮が起こり、瞳だけはこれを隠せず淫靡に潤ませていた。
 姫君ただ一人、平静に唐崎と岩瀬を眺めていた。自ら為したこともなければ誰のをも見たことがない、目の前で繰り広げられる営みを、それそのものとして見るほかないから、特別な感慨を持たずに形や動きをまじまじと見ていた。
「か、唐崎様、もう俺ぁ耐えられんです。繋がりましょうよ」


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