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喰われる人妻 菜穂
【若奥さん 官能小説】

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第8話-1

「あの……皆様にご迷惑を掛けてしまい、大変申し訳ございませんでした。」


菜穂は天野部長とその周囲にいる者達に、深く頭を下げた。


「まったく困ったもんだ、あなたの旦那はあの歳で自分が飲める酒の量も知らないんだな。あれでは先が思いやられる。」


「まぁまぁいいじゃないですか、奥さんがこれだけ謝っているんだから。」


菜穂を擁護するようにそう言って笑顔を見せる天野。


「では奥さん、小溝君の代わりに私達に付き合ってくれるかい?」


「は、はい。」


「奥さんは酒はいける口なのかね?」


「いえ、私もそんなには……。」


「でも全く飲めない訳じゃないのでしょう?」


「……はい。」


「大丈夫ですよ、私は無理はさせませんから。」


「ありがとうございます。頂きます。」


天野に注がれたお酒に口を付ける菜穂。


「いやぁやはり美人だとお酒を飲んでいる姿も絵になりますなぁ。」


「本当だ、それこそ酒のCMを見ているようだ。」


「それに浴衣姿もよく似合う。なんというか、実に色っぽいですなぁ、へへへ。」


天野を始めとする男達からの視線に、菜穂は恥ずかしそうに顔を赤くした。


「奥さん、学生時代は随分とモテたんじゃないですか?こんな美人、周りの男が放っておく訳がないからなぁ。」


「学生時代だけとは限らんでしょう。今だっていくら既婚者とはいえ、男に声を掛けられる事も多いんじゃないですか?」


「い、いえ、そんな事は……」


「奥さんだったらどんな男も選び放題でしょう。結婚して子供が居ても、女性である事には変わりないんですから、本当は今でも新たな恋をしたくなる時があるんじゃないですか?」


「私はそんな、恋だなんて……」


「ん?じゃあご結婚されてからは旦那さん一筋ですか?」


「は、はい、もちろんです。」


「ほぉ〜それでは益々旦那さんが羨ましいですなぁ。」


「しかし結婚8年目だと、色々と不満も出てくるでしょう?例えば、へへ、夜の生活とか。」


「ぇ……」


徐々に話が脱線していくから嫌な予感はしていたけれど、まさかそんな事まで聞かれるとは思っていなかった菜穂。

そんなの、答えられるわけがない。


「そうそう、特に奥さんくらいの年齢の女性には本当に多いんですよねぇ、欲求不満を抱えている方が。」


「どうなんです?奥さんは、旦那さんにちゃんと満足させてもらっているんですか?」


「……あ、あの……困りますそんな事……」


酔っ払った顔でしつこく聞いてくる男達に、さすがに菜穂も不快感を隠すことができなかった。


「小溝君は見るからに淡白そうだからなぁ。最近の言い方で言えば草食系とでも言うのかな。」


「まぁあのタイプの男はまず間違いなくそうでしょうなぁ。忙しさに負けて、奥さんに構う事ができずにそのままセックスレスなんて、よく聞く話ですからねぇ。」


確かに、智明はセックスに積極的なタイプではない。それは当たっていた。

特に2年前に仕事が忙しくなり始めてからは、実は智明と菜穂は一度もセックスをしていなかった。

いや、本当の事を言えばその前から、2人目の子供を出産した辺りからセックスの回数は大幅に減っていた。

菜穂がその事に不満を持っていなかったと言えば嘘になる。

どうしてだろうと何度か考え、悩んだ事もあった。

これ以上子供を増やす予定はなったから、もしかしてそれで智明はもうセックスは必要ないと思っているのかな、とか。

私にはもう女としての魅力を感じなくなっちゃったのかな、とか。



菜穂にだって性欲はある。

天野達に言われるのは嫌だったが、確かに30代になってからは特にそういう気分になる日も多くなった気がする。

でもだからと言って当時はその不満を智明に打ち明ける事なんてできなかった。

恥ずかしかったし、日々生活する上でセックスはそれ程優先順位が高いものではなかったから。

そしてやがて智明の会社が傾き始め、全くそれどころではなくなってしまった。


「おや?奥さんその表情は、もしかして図星ですか?」


「……えっ!?」


自分達の性生活について少し考え込んでしまっていた菜穂は、そう声を掛けられてハッとして我に返った。


「ハハッ、そうですかぁ、やはりどこの夫婦も同じようなもんですねぇ。小溝君の場合は前の会社でも忙しく働いていたようだし、まぁある意味仕方ないですな。しかし、それだと奥さんは可哀想だなぁ。」


「そうだよなぁ、こんな美人に家事と子育てだけさせてほったらかしにしておくなんて、実に勿体無い。」


「い、いえ私は……あの……」


「まぁもし私の妻が奥さんのような美人だったら、そんな風にはしないがね。逆に毎日でもこちらからお願いしたいくらいだよ、ハハハッ!」


「ハハッ、私もこれだけの美人さんなら、例え腰痛を抱えていたとしても頑張りたくなるでしょうね。小溝君は本当に勿体無い事をしているよ。その辺りも今度しっかり説教せねばならんですね。」


エスカレートしていく男達のセクハラ発言に、菜穂は怒る事もできず、ただ顔を赤くしながら耐える事しかできなかった。

こんな宴会早く終わってほしいと願いながら、時間が経つのを待っていた。

この宴会さえ終われば、明日は帰るだけなのだからと。

しかし菜穂のその考えは甘かった。

宴会が終わっても、まだ夜は続く。菜穂にとっての本当の困難は、ここからだったのだ。


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