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たぎる
【その他 官能小説】

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たぎる-7

(7)


 2か月半ぶりに夫が帰った夜、木綿子は長年築き上げた2人のセックスの形を完全に無視した。忘れていたのではない。徐々に高めて極めていく余裕がなかったのである。
 男を、
(貪りたい)
燃え盛る体を、
(ぶつけたい)
夫のペニスを、
(咥えたい)
充血したおまんこに、
(突っ込みたい!)……

 正常な精神状態ではなかったのはいうまでもない。ドア越しに聴いた2人のセックスが木綿子を狂わせていたのだが、強烈に脳波を揺るがせたのは精液のにおいを嗅いだ時だった。
 翌朝、生々しいやり取りが頭を離れないまま正彦の部屋を訪れ、机の隅に結びのあるスーパーの袋を見つけた。
(空袋……)
思いながら、半透明のブルーの色が透けて見えた。
(これは……)
開けてみると使用済みのコンドームが2つ入っていた。
(2回も……)
知らなかった。……

 摘んでみるとよれよれの袋の先端には大量の液が溜まっている。途中で捨てるつもりだったのを忘れていったのだろう。
(正彦のペニスを被っていた……)
 くっついている1本の陰毛。
(正彦のだろうか……)
鼻を近づけて思わず吐き気を催した。精液の青臭さ……ではない。
 生臭く、かすかな酸化臭が混じっている。
(これは紗枝の膣に納まっていた……)
実際、臭気の源がそれだったのかはわからない。だが紗枝の体内に入ったことはまちがいない。それだけで木綿子は心の形が変わっていた。 


 久しぶりの一家団欒。腕を振るった料理。弾む会話。娘も息子もいつもよりテンションが高かった。ふだんならとっくに部屋にもどる時間になっても居間から離れなかった。留守中の些細な出来事が次々と出てきて話が終らない。
「勉強はいいの?」
何度か促した後、木綿子は先にシャワーを浴びた。ぐつぐつと体の中に噴き出してくるのは苛立ちでもあったし、欲情でもあった。
(夫だって待っているはず……早く切り上げて……)
 その苛立ちがさらに情欲を煽った。

 夫が布団に横になるやいなや、木綿子は被さって唇を押しつけた。そして舌を差し入れ、しがみついた。
「うう……」
怒張したペニスが下腹に当たる。
「あなた、会いたかった」
「俺もだよ」
「浮気しなかった?」
「するわけないだろう」
夫の手が尻を確かめるようにパジャマを脱がしていく。下着はつけていない。

「ああ……」
全身に快感が走る。
木綿子は起き上がると自ら脱ぎ、全裸になって夫のパジャマを引きはがすように下半身を露にした。
(すごい)
跳ね上がるペニス。硬い幹を握り、
(ああ、脈打ってる!)
たまらず口に含み、顔を振った。
「うう、木綿子」
亀頭が口中で暴れているみたいだ。

「あなた、自分で何回した?」
「何回って……木綿子を思い出しながら我慢できなくて」
「あたしなんか、ずっと待ってたんだから」
正彦の圧迫が甦り、木綿子は夫に跨ると体を沈めた。
「ああ……」
溢れた蜜の中にペニスは子宮に響くほど雄々しく刺ささった。

 納まった確かな肉棒の実感が正彦のモノと重なる。
(ああ、どうだっただろう)
重なりはしたが、あの時はあまりに突然で結合の明確な感覚の記憶はない。

 自然と体が上下してずんずん突き当たる充溢感に頭が朦朧となっていく。
「木綿子、あぶないよ。出そうだ。コンドーム」
切迫した掠れた声が飛んだ。
「出る時言って。抜くから」
「もう、出る。うう」
直後、木綿子は膝を立てて抜き、飛びつくようにペニスを口に含んだ。
「くう……」
生温かい液が噴射された。
「うう……木綿子……」
夫が体をひくつかせながら見下していた。

 液は口内に満ち、ペニスが萎んでいく。それでも吸いついて放さなかった。
こんな行為は初めてである。フェラチオは嫌いではなかったが、口内発射は若い頃夫にせがまれてしたことがあるが、一度で懲りてしまった。においや味はともかく、感触が不快で翌朝は食事が出来なかった。それが考える間もなくむしゃぶりついていた。

 子供たちが2階にいることを確認して素早く洗面所で口を洗った。不快感はなかった。射精を承知で受け止め、自らの淫液までも舐めながら昂奮は途切れることなく持続している。
(妄想が黒雲のように広がっている……)
なぜかそんな感覚があった。
 夫のペニスは正彦のモノとなり、紗枝への嫉妬が精液を搾り尽くした……。

「今度はあなたよ」
部屋へ戻るなり、木綿子はぱっくり股間を広げて迫り上げた。
「声が大きいよ」
「大丈夫よ。早く、あなた、あたしまだイッテないのよ」
「わかったよ、木綿子。燃えてるんだな」
夫は吸っていた煙草を揉み消すと秘唇に顔を寄せて言った。
「声出しちゃだめだぞ」
「うん……」
吹きかかる熱い息を受けただけで木綿子の頭は陶然となっていく。
 垣間見た夫のペニスはだらんと垂れている。
(早く硬くなって埋めてほしい……)
たぶんその瞬間、それは仮想正彦のペニスとなって貫かれることだろう。
「あなた、あたしも舐める」
「洗ってないよ」
「いいの。ちょうだい」
勃たせて、一つになりたい。
 木綿子は淫臭放つペニスを吸い上げ、袋を揉み上げた。


 



 


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