投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

たぎる
【その他 官能小説】

たぎるの最初へ たぎる 9 たぎる 11 たぎるの最後へ

たぎる-10

(10)

 その夜、木綿子はテンションの高い自分を持て余していた。よく喋り、頬が痛くなるくらい正彦に笑いかけた。昂ぶりを抑えれば抑えるほどそれを隠そうとして作為の明るさが出た。自分でもそれはわかっていた。

「お姉ちゃんが帰ってくるまで2人だけよ。なんか淋しいね」
「そう?」
「お母さん女だから、心細いの。泥棒なんか入ってきたら怖い」
「そんなのあるわけないじゃん」
「もしそうなったら、助けてよ」

 食事も想いのまま、バランスを無視したものだった。
ふだん買うことのないA5ランクの和牛ステーキ、正彦の好物のから揚げ、レトルトのカレー。すべて正彦におもねった料理であった。
「すっごい肉だね。とろけるよ」
「特別よ。高級なんだから」
「こんなの初めて」
「内緒だからね」

 会話が弾んだと思ったのは勝手な思い込みだと、木綿子は自身でうすうす感じていた。待ち望んだ状況の真っただ中にいる自分の足元が心もとない。やっと訪れた正彦と2人の夜だというのにどうしていいかわからないのだった。
(男と女だ……血のつながりはない)
割り切ってたぎる想いの濁流に身を任せるつもりでいた。だが深い淵から母子の暗い目が覗く。
 そんな不安定な気持ちが意味のない饒舌となっていた。

(正彦の気持ちは?……)
いまなら他に誰もいない。強引に、乱暴にぶつかってきてもいい。
(ためらっているの?)
忘れてはいないでしょう?
(あなた、あたしの中に入ったのよ……)
今度はもっと気持ちよくしてあげる。……
 頭の中では大胆なことを考えながら、いざ行動となると動きは鈍かった。
(ああ、来てくれたら……)
その夜は一人寝で、疼く秘唇には触れず脚をよじって耐えた。

 翌日も同じ流れになった。意識のせいか、この日は言葉がぎこちなくて会話も減った。食事が終わってテレビを観ていた正彦も早々と2階へ上がっていった。その背中に、
「お母さん、先にお風呂入るから」  
そう言うのが精一杯だった。
(だから、あとで……来ていいのよ……)

 布団の中で身を硬くしてじっと待った。風呂から出た正彦が入ってくるのを息をひそめて待った。夜が更けて重い疲れに被われて眠った。 

 三日目、正彦を送り出してから彼のベッドにもぐり込み、声を上げて布団を掻き抱いた。
「あうう……正彦……」
布団を脚に挟んで締め上げる。
(ああ、滲んでくる……熱い……)
秘部は化膿したみたいにズキズキした。それでも手を差し入れなかった。

(もう、我慢できない)
待っていてはだめだ。自分から動かなければ……。誘うか、挑発するか、少なくとも正彦を刺激して『道』を作ってあげなければ。……意を決した。

 さすがに夫に縋るように正彦を求めることはできない。彼が求めてきたら黙って受け止める。その『形』しか『息子』を抱く方法はない。『あの時』のように正彦が衝動的に被さってくるように、しなければならない……。
(計画を練ろう……)
起き上がってベッドから降りると、たらりと蜜が溢れ出た。下着は失禁したように濡れていた。   


たぎるの最初へ たぎる 9 たぎる 11 たぎるの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前