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10days
【青春 恋愛小説】

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ゲームの行方-3

「おはようございます。」
改札口を出ると、そこには柚香が既にいた。
「おはよ。・・・ごめん、待たせたかな?」
一応約束の10分前には着いたのだが、デートに男が遅れてくるのはなぁ・・・
と思い謝る。
「いえ、ちっとも待ってないです。」
そう言って自分の前で手を振って否定しているが・・・。
待ってない・・・そう言った柚香の指先はほんのり赤く染まっていて、手を握ってみるとかなり冷たい。
ずきん・・・自分の胸が痛む。
きっと暫く前から自分を待っていたんだろう。
その手が少しでも温まるように握りしめる。
待たせてごめんーーーそんな気持ちを込めながら。


最近流行の純愛映画を観る。
こんなことあるかよ・・・なんてふと横を見ると、瞳から涙を溢れさせ肩を震わせている柚香がいた。
しかも周りを気にすることなく必死でごしごしと目を擦っている。
今までの女と比べるのは悪いけど、こんな行動は初めてだ。
だってそうだろう?そんなごしごし擦ってたら目は腫れるし、化粧は落ちるし・・・。
普通、というか俺の知っている女達はそんなことしなかった。
なんていうか、柚香って自然体で自分をかわいく見せようとかいう計算はなくて・・・。
守りたくなるというか、愛しいというか・・・。


「え?」
思わず声を漏らす。
幸い柚香には聞こえていなかったようだ。
愛しい?俺、今そう思った・・・よな。
ばくばくと柄にもなく心臓が高鳴る。
かぁーーーっと顔に熱が集まり始めた。
ふい、と横を見るが、映画に夢中になっていてこっちの様子には気付いていないようだ。

「目、赤くなって腫れるよ?」
自分の顔が見えないように、柚香の体を引き寄せている自分がいた。
そのまま、映画を観続けたが、終わってからもこのまま暫くいたい・・・なんてそんな気持ちが俺の脳裏を横切り苦笑いする。


泣き腫らした柚香の顔では流石に街中を歩くには抵抗があるだろう、と近くの公園に寄った。
「すみません。」
何度も謝る。
謝ることなんてないのに。
迷惑を掛けている・・・とでも思っているのだろうか?
「素直に泣けるのって良い事だと思うよ?」
ほんとにそう思った。
なんか、自分が失くしかけたものを柚香は持っている。
素直な心
純粋な心
羨ましいと感じる反面で、守りたいと思う自分がいた。
きっとそれら全てに惹かれている。

ふいにデパートの「クリスマス」の文字が目に入る。
「そうだ!クリスマス、空けておいてよ。」
突然の提案にきょとん、と柚香が俺を見る。
「クリスマス・・・ですか?」
冬休みに入ったら一緒に登下校が出来なくなるし。
少しでも柚香と一緒にいたいから。
「そう、24日。絶対予定入れないでよ。」
そんな俺の言葉に
「はい!楽しみにしています。」
満面の笑みを浮かべて答えてくれた。



一緒にいるのが当たり前になっていて
大事な事を忘れていた。
あまりに居心地が良すぎて
ずっとこのままでいられる、なんて甘いこと考えていた。
俺と柚香が付き合い出したのはもともと・・・。



最近、柚香の元気がない。
一体いつ頃からだったか。
話をしていてもどこか上の空で、たまに考え事をしているのか無言になることが多くなった。
だけど、それには気付いてない振りをしていた。
いや、気付こうとしなかった。


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