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忘れ得ぬ夢〜浅葱色の恋物語〜
【女性向け 官能小説】

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たどり着いた場所-6

「でも、」神村が言った。「君との夜を重ねるうちに、僕は君のことが本当に、心から好きになっていった。これは嘘じゃない。君とずっと一緒にいたい、君の笑顔が見たい、君と同じ空気をこの胸に吸い込みたい、って」
「そう……」
 神村は目を閉じ、自分の胸に手を置いて、苦しそうに一度大きく息を吸い、震わせながら吐いた。

「思えば、職場でも僕は君をずっと見ていたような気がする」

「えっ?」
「君のスタッフのみんなへの気遣い、控えめな口調だけどしっかりした行動。最初の頃は、よく気がつくいい子だな、ぐらいに思ってたけど、だんだんこんな人が僕のそばにいてくれたら、って思うようになってた。そしたらもう、君だけが暗闇の中の蝋燭のように職場で明るく輝いて見えて、他には何も見えなくなってた」

 神村と二人きりの時間を過ごす時、彼が絶対に口にしなかった職場の話題を持ち出したのに私はひどく驚いた。

 彼は興奮したように早口で続けた。「そしてこういう関係になって、実際君と触れ合っていると、胸が熱くなって、大きな幸福感で身体中が満たされる。抱き合っていてもいなくても、君と二人きりでこうしているだけで、僕は世界中の誰よりも恵まれた存在に思えて、温かい日だまりの中にいるような安心感に浸っていられた!」

 私は速くなった自分自身の鼓動に気がつき、思わず胸に手をあてた。

「君のことしか見えなくなってるんだ……今も」

 神村は目を少し潤ませ、照れくさそうに頭を掻いた。「ごめん、かっこつけちゃって……」

 ――彼が私の前で目に涙を浮かべるのも初めてのことだった。

 私の胸の中で揺らめいていた怪しく赤い炎は、急速に小さくなっていき、やがて細い煙を一本残して消えた。その代わりに身体の奥から、熱く沸騰した甘い疼きが湧き上がり始めた。
 私はどんどん強くなっていく動悸を無理に落ち着かせようと焦りながら、努めてゆっくりと言った。「神村さんが、わたしをそんなに熱烈に想って下さることは、とっても嬉しい。でも……それがわたしであってはいけなかったと思います」
 神村は目を閉じ、小さくくぐもった声で言った。「……そうだね」
「わたし、あなたに最初に誘われた時、お断りするべきでした。やっぱり」
 神村は胸を膨らませ、はあっと大きく息をした。「僕の思い上がりだ。僕と同じように君も僕のことを想ってくれているって勘違いしていた。」

 しばらくの沈黙の後、私はようやく口を開いた。声が震えていた。「わたし、あなたにそんなこと言われたら……」
「え?」
「引き返せなくなっちゃうじゃないですか」
「シヅ子ちゃん……」
 私は神村の目をまた睨み付けながら大声で言った。「なんでそんなにわたしを想ってくれるの? やめて! もうやめて! お願い、わたしをこれ以上苦しめないで!」
 私の目からはまた涙が溢れ始めていた。
「シヅ子ちゃん、ご、ごめん、そんなつもりは、」神村は身体を起こしておろおろし始めた。
「わたしだって好きだった。あなたが大好きだった! 優しいあなたに抱かれて、心も身体も満たされた」
 私は顔を両手で覆って嗚咽を漏らしていた。神村は起き上がったまま、私の髪を撫でた。

「神村さん、照彦……さん! 優しいあなたの声が、優しすぎるあなたの唇が、汗ばんだ熱い肌が、身体の重さが大好きだった!」
 私は手を離し、涙でくしゃくしゃになった顔を神村に向けた。彼は私の顔を覗き込むようにして、今にも泣きそうな顔で私の目を見つめた。「シヅ子ちゃん……」

「満たされた。心も……」
 私の手が自然と彼の顔に伸び、その頬を撫で、緊張したように結ばれた彼の唇に指が触れた。「心も身体も」

「シヅ子っ!」
 神村は大声でそう叫ぶと、私に覆い被さり、激しく口を交差させた。私は彼の熱くなった身体を両手で力一杯抱きしめながらそれに応えた。

「来て! 照彦さん! わたしを、わたしを愛して! 二人の初めての夜のように!」
「シヅ子! シヅ子っ!」
 私と神村の身体は激しく絡み合った。
 そして彼の手が私の太ももに触れた。私は焦ったように膝を立てて脚を開いた。そして神村の身体を強く挟み込んだ。
 彼の身体の中で最も熱くなっている部分が私の潤った谷間に宛がわれる。そして身体をぴったりと重ね合わせたまま、それはすぐに私の奥深いところまで到達し、びくびくと脈動を始めた。

 深く繋がり合った二人はずっとお互いの口を塞ぎ合い、喘ぎながら貪るようにその感触を確かめ合っていた。

 二人の身体が一つになり激しく波打つ。

 二人の身体が汗にまみれ、激しく上下する。

 もう何も考えることなどできなかった。

 全身の肌が嵐になぶられる木の葉のようにざわつき、荒い呼吸が止まった瞬間、目の前が真っ白になり、胸の奥で熱い爆発が何度も起きた。
 ぐううっ、と大きく呻き声を上げたその人は、私をきつく抱きしめたまま、身体を何度も大きく脈動させた。そして私の中心に向かって、激しく何度も何度もその熱い想いを放ち続けた。



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