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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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H.-8

瀬戸の切なそうな声を聞きながら陽向は何も言えずに黙っていた。
「風間」
瀬戸が言う。
「お前のコト好きだったのはホント。ずーっと好きだった。今でも好き…。ライブじゃあんなガツガツしてんのに俺の気持ちに少しも揺らがない強さとか、病棟じゃ見た目によらず大人っぽい部分があるトコとか、患者と喋ってるトコとか、優しく笑うトコとか…全部」
瀬戸は「ホントにお前ってズルいよな」と笑った。
「ズルいって何ですか」
「音楽の才能はあるし、患者にも優しいし、それでいて患者から『風間さんは優しい』って慕われてるし、五十嵐湊みてーなイケメン連れてさ」
「…そんなこと、ないです」
「神様は不公平だよなぁ?」
ヘラヘラと笑う瀬戸の表情は明らかに暗かった。
笑っていたけど。
「お前はホントに誰にでも優しいんだな。損だぞ」
「何でですか?!」
「良い顔してっと、悪い奴が寄ってくるぞ」
「良い顔してないから大丈夫です。自分のコトは自分でやります」
「ははっ。何言ってんのか意味わかんねーけど……それもまたありきなのかな」
陽向は表情だけで微笑んだ。
「そろそろ帰る?五十嵐湊も心配してんだろ」
瀬戸は陽向にジャケットとマフラーを渡した。
「……」
陽向は何も言えず、ただ渡されたものを受け取り、バッグを持って玄関へと歩いて行った。
靴を履き、送り出してくれる瀬戸の方を振り返る。
「…なんだよ」
「え…?」
「なんか物言いたげな顔だけど?」
彼の顔を見ることはできなかった。
出来れば顔を見て話したい。
けど、無理だ…。
「…瀬戸さん」
「なに」
「今度ライブやるとき、また来て下さい。招待します」
「ははっ。楽しみにしてるよ。ワタルと行く」
社交辞令なのは分かっている。
だけど、それしか言える言葉はなかった。
「明日、勤務?」
「…いえ。休みです」
「俺も休み。あさっては?」
「日勤です」
「はは。俺も。リーダーなんでヨロシク」
うわー…リーダーか……。
そう思いつつも「よろしくお願いします」と言う。
陽向は「お邪魔しました」と最後は笑顔で…多分笑顔を作れたと思う顔でドアを開けた。
閉める間際、瀬戸に「風間」と呼ばれる。
「はい」
「今日のコトは誰にも言わねーし、言いたくもない。だけど、俺の気持ちは受け取って」
「……」
「好きじゃなくなったらまた言う」
瀬戸のその言葉に陽向はヒヒッと笑った。
「明後日、遅刻すんなよ」
「瀬戸さんもね」
「するかバーカ。早く帰れ」
「あはは。お疲れ様です」
陽向は強張っているであろう笑顔を作り、ゆっくりとドアを閉めた。


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