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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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H.-3

あらゆる物が新居に揃ったのは夕方を過ぎてからだった。
各々の楽器を持ってきて間接照明を灯しながら12畳のリビングで酒と音を交わす。
味のある灯りを灯すのは、新居祝いで湊の兄からもらったステンドグラスのランプだ。
「ジョージ、良いアコギ持ってんね。味ある」
「とか言う洋平もそのペペギター、イカしてんじゃん。フォルムまじ最高。…セッションする?」
「おう、いーぜ!ロマンティックにノれっか?……oh sey wow...」
酔っ払いの掛け合いが始まった。
いつものことだ。
温かい何かに包まれた空間で、笑いを交わすこのひと時。
人がいるだけレパートリーがある。

今宵は…大切なひと時だ。

洋平が奏でる音を辿り、ジョージがそれに乗っかり味のある音が生み出される。
海斗はラップを刻み、亮太がベースギターを弾く。
湊はいつだかに買ったカホンを取り出して音を見違えるようなモノにする。
陽向も負けじと小学生の頃使っていたメロディオンのチューブを首輪にかけ吹きながら合わせて音を辿る。
きっと次はこう来るんだろうな…と思いながら予想でかかる音も、見事にフィットする。
5分も経たない間に曲が出来る。
「もっかいやるか!」
亮太の笑い声と共に湊の激しい煽りが入り、楽しいセッションが始まる。
「Okay!まだまだ見たことないスケール!今夜はカラフル!jam.jam.Going!」
「あははっ!陽向サイコー!誰の歌詞?」
「ひなちゃん!飛ばしちゃって!」
陽向はグルングルンになりながら謎のラップを刻み続け、亮太と踊った挙句、眠りに落ちた。
どの段階で眠ったのかは覚えてない。
毎日こんなんだったらいーのにな。
陽向はそう思いながら、新居に置かれたソファーに横になった。
「おーい、歌えよ陽向」
「ぁうー」
「バカバカ。お前いねーと始まんねーよ?」
「ふー…んん…」
「ダメだこりゃ」
亮太が口をへの字に曲げて笑う。
「湊ー。ものたんねぇ。もーいっちょ激しいのお願い」
そう言いながら右手を差し出した亮太の手には何杯目か分からないビール。
「いーねぇ亮ちゃん、さすが。俺も飲む」
「新居祝いにもっかいカンパーイ!」
亮太の缶と自分の缶をパカンと合わせる。
他の3人も新しくビールの缶を開けて、笑い合う。
「この間のライブさぁ」
ジョージが大介に目を移して言う。
「めちゃくちゃ良かったよな。あれ、もっかいやりてー!」
「だよねだよね!俺もスゲー楽しかった。なんつーのかな…こう、みんなで楽しむっつーの?」
「そーそー!めっちゃ楽しかった!ね、またライブやるっしょ?」
「うーん。コイツ次第かな」
大介が陽向に視線を移す。
「陽向が一番大変だからさ。でも……なのに、いっつも完璧だから俺ら陽向には何も言えねーよ。スゲーんだよ、コイツは。こんな器にとどまってちゃもったいねーなって思う。もっと凄い人達とやればいーのにって」
大介が切なそうな顔をした時、湊は「桑野、それ本気で言ってる?」と言った。
「…え?」
「お前らと一緒にやれてるだけで十分幸せに感じてると思うぜ?陽向がやりてーのは、お前らとやる音楽なんだから。他の誰とやってもコイツは絶対楽しいと思わねーと思うよ。…もっと自信持てよ、アホくせぇ」
酔っ払った湊は鼻で笑った。
「どんくらいやってんだっけ?Hi way」
亮太が興味津々に問う。
「んー…もう3年くらい経つかなー?」
「結構経つねぇ」
「そっちは?」
「俺らは…んー……もう5年になんのかな?」
「え!そんなに?!だから腰座ってるワケかぁ…」
大介がしみじみ言うと「お前らには敵わねーよ!」と湊が笑った。
「ちょービビってばっか。新しいの出来たって陽向に言われる度に、ちょっとドキドキすんもん」
「なにそれー!」
「いやいや、マジだよ。あいつの頭ん中ぶっ飛んでっからさ、歌詞考えながら1人でここの音があーでもない、こーでもないっていちゃもんつけてさ」
「うわー!そんな言われてんだ!」
「ま、参考程度に」
「キビシイからなー、陽向は」
「まぁそんくらいがいーよね!刺激的で」
「言われないくらいになんねーと!」
大介がケラケラ笑う。
陽向にはそんな言葉も届いておらず、幸せそうに眠っている。
「陽向には、ずっと歌っててほしいなぁ」
大介が呟く。
「ずーっとコイツと音楽やりたい」
「やりゃいーよ。俺らもずーっと続くから」
湊が亮太とジョージを見る。
「そーそ。俺も声枯れるまで歌うし、コイツらと音楽創ってくつもり」
ジョージがニッコリ笑う。
「今宵は楽しかーーー!」
ジョージのその言葉に全員が爆笑する。

限りある人生を、仲間と大切な人に捧げたい。

湊はカーテンの隙間から覗く星空を見ながら思った。


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