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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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H.-1

「やだっ!こっちがいい!」
「はぁ?1万も違うんだぞ?間取りだってこっちのがいーじゃんかよ!」
「こっちは収納もいっぱいあるし、キッチンだってカウンターキッチンだもん!」
「カウンターキッチンだもんって、お前そんなに料理しねーだろーが」
「するもんっ!」
「…は。しないね。賭けてもいい、ぜってーやんねー」
「じゃあ湊がやる!」
「意味わかんねー」
12月中旬の13時。
駅前の不動産屋で喚き散らす2人を相手に、担当の従業員がハンカチで額の汗を拭っていた。
「あの…」
「つーか最近お前ん家、冷蔵庫ん中グレープフルーツとりんごばっかじゃねーかよ」
「うるさいな!時間ないんだからしょーがないでしょ!てゆーか勝手に冷蔵庫見ないでくれる?!」
「は。忙しさを理由にするんですか」
「あ、あのー…すみませーん…」
「じゃあさ、じゃあさ、言わせてもらうけどさ!湊ん家の冷蔵庫だってビールばっかじゃん。しかもcorona」
「うっせーな!あれは兄ちゃんがくれるんだよ」
「あ…あ、あのっ!す…すみませんっ!!!」
従業員の声に陽向と湊はハッとなり「すみません…」と声を揃えて謝った。
「一度、これらも含めて見学に行ったらどうでしょう?」
従業員の提案に、2人は頷いた。
汗を拭きながら従業員が立ち去る。
「湊が怒るから店員さん焦ってたよ」
「おめーがギャーピー言うからだろ」
「見に行ったら絶対あたしのやつの方が気に入るよ」
「どーかな」
鼻を鳴らす湊に腹が立ち、思い切り腕を殴る。
「…ってーな!」
「ばかっ!」
「あー、うっせ」
「ホント腹立つ!なんでこんな意地っ張りなの?!」
「はぁ?テメーもだろーがこのチビ!」
「チビじゃないもん!」
「あ…五十嵐さーん……」
「はい?」
「準備出来ましたのであちらのお車へお願いします」

陽向の候補と湊の候補の物件を見たが、どちらもしっくりこない。
車中であーでもない、こーでもないと喚く2人に従業員が再び汗を拭ったのは言うまでもない。
店舗に戻り、またあーでもない、こーでもないとイチャモンをつけた挙句、従業員は「これならどうでしょう」とやや高めのマンションを提示してきた。
1DKでありリビングダイニングは12畳、カウンターキッチンありで、隣の部屋は6畳。
…収納もそれなり。
「ちと高いな」
「10万はちょっと…」
「でしたら……このタイプもありますよ」
従業員が見せてきたものは、築年数はわりと経っているものの同じような間取りで7万8千円。
「うぉ!」
「こちらはどちらも洋室になっています。カウンターキッチンもありますよ」
「見学できます?」
「もちろん」
すぐさま見学し、すぐさま決定。
だいぶいい物件を見つけたと2人で笑い合う。
汗をかいていた従業員もなんだか嬉しそうだ。



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