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笛の音
【父娘相姦 官能小説】

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笛の音 2.-2

「したい、って気持ちでいっぱい。……でも、なら明日死んでもいいか、って訊かれたら、それはやだ。今日、チューの続きしてもいいってなら、明日以降も絶対死ねない。死にたくない」
「そうですか……。……そうですよね。わかりました」
「……んで、俺はどうしたらいい?」
 有紗は毛先を離し、扱いた毛束を胸元に真っ直ぐ垂らし直すと、長い嘆息をついてから明彦を見つめた。その貌を見返す明彦の表情には欲情の色は伺えなかった。朗らかな笑みを湛えているが、頭の中では高速に冷徹な計算が行われているのだろう。
「じゃ、俺からも訊いていい?」
 問いに答えず、黙って顔を見る有紗に明彦が聞き返してきた。
「……どうぞ」
「俺と続きしたら、やけのやんぱちになってる前原さんじゃなくなる?」
 そう言われて眉を顰めた。
「なんですか、それ?」
「――会社の研修でさ、『非言語コミュニケーション教育』ってのがあんだよね。営業マン必須の。喋ってるコトバだけじゃなくて、表情とか、仕草とか、そーいったのから相手の真意を見抜きましょう、ってヤツ」
 有紗は黙って明彦の話を聞いていた。「……今日は妙に短いスカートでセクシーな感じだし、いや、それはそれで嬉しいんだけどね、……で、チラ見してんの気づいてんのに怒らないし? もたれられると今日は香水のいい匂いするし、前原さんのほうから『チューの続き』に持って行こうとしてる感じだし」
「……で、それらを分析すると、どうなるんですか?」
「可能性としては、前原さんも俺のことを好きになってくれてて、心底そうしたいと思ってくれてるか、もしくは……、もーどーでもいー、ってなっちゃってるか。……俺のことを好きになってくれてる可能性はかなり低いよね。今日、手応えまーったくないもん。もし、これで『イケる!』って思っちゃったら、俺、かなりイタイ奴だよ」
 そう言って明彦は笑った。有紗のことを侮るわけでもない、自嘲するわけでもない、導き出した分析があまりにも当たっていたから、言っている自分でも驚いているといった笑いだった。心を見透かされた有紗は、最初露悪されていくうちは恥辱と嫌悪に顔を顰めそうだったが、最後には明彦の笑いに救われて、つられて笑った。
「……そういうのって、口説こうって女の子に話しちゃダメなんじゃないんですか?」
「そだね。手口バラしてるようなもんだもん」
「なんでバラしたんですか?」
「……」
 明彦は鼻から長く息を吐いて、「もう、前原さんに本気で惚れちゃってるから。二回もジラされた罠にまんまとハマってね」
「別に、私がハメたわけじゃないですよ? 一回目は妹、二回目は――」
 家に呼び戻されて、と言おうとして、つぶさに思い出しそうになったあの日に胸が痛んで詰まる。
「だろうね。忘れられない男がいる子が、そんなことするわけない」
 更に明彦が追い打ちをかけてくる。この切れる頭は、有紗を慮って常に心地良くしてくれる、というわけではなさそうだ。余計なところまで読んでくる。
「……わかりました。じゃ、ちょっと待って下さい」
 有紗は明彦の腕の中を未練なく抜け、ソファから立ち上がった。部屋の隅に置いてあったバッグから携帯を取り出す。映画を見ている間、何度も振動音が聞こえてきていた。全く無視している有紗に、気づいていないのかと思った明彦が「鳴ってるよ」と教えたが、大丈夫です、とだけ言って有紗は画面から目を離さなかった。だいたい予想はつく。まず目に飛び込むのは叔父からの執拗な――、『どこで何してる?』
 朝、今日も友達と飲んでくるから夕飯は要らない、と洋子に告げて出てきていた。コーヒーを飲みつつ有紗を一瞥するも何も言わなかった信也だったが、飲み会などそうそう続くわけではないから疑りを持っているのが如実に伝わってきた。叔父を悋気に沸々とさせてしまっては、それが週末に暴威となって襲ってくるに違いなかったが、今は返事をする気にはなれなかった。
 そして、叔父からのメールの群れに紛れ、見つけた。やはり今日も来ていた。有紗はソファに座ったまま有紗の為し様を眺めている明彦の前で、前にかかった髪を後ろに払って携帯を耳に当てた。
「もしもし……」
 ずっと電話を手にして鳴るのを待っていたのだろうかと思えるほど、すぐに直樹は出た。
「あのね、いい加減にして。もう連絡してきてほしくない」
 東京に来て信也に無理やり携帯の番号を変えさせられた日に食べたレストランの食事と同じく、愛美と直樹と三人で全く味のしない夕食を食べ、直樹と別れ二人で電車に乗っている中、妹に隠れてメッセージを送った。
『昨日のことは全てナシにして』――『愛美に変なこと言ったら、ただじゃおかない』
『一度話そう』
 すぐにメッセージが帰ってきたが有紗は何も返さなかった。それから毎日直樹からメッセージが届く。だが有紗は今日まで無視し続けていた。無視する苦しみが一番楽だった。
「……話を聞いてよ」
「私には話すこと何もないから。ね? 彼女と仲良くしてて」
「イヤだよ。とにかく、話がしたい」


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