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浦和ミュージックホール
【その他 官能小説】

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支配人と-1

 実のところ、支配人に会うのは初めてだ、しかしいつも空いている回に来ていたし、みどりやリリーが話してくれていたので憶えていてくれたのだ。
 「良くお見かけしてましたよ、風俗ライターになられていたとは」
 「先輩にこの劇場に連れてきてもらって、その時にみどりさんのまな板に上がらせてもらいまして、それが私の初体験だったんです」
 「そうですか、みどりはあなたのファンみたいでしてね、まな板であなたが勝ち抜くと嬉しいとよく言ってました・・・どういうご用件で?」
 「唐突ですが、風営法が目前ですね」
 「ええ、頭が痛い、というよりお手上げですね、ロック座とかならなんとか生き延びられるんでしょうが、ウチではもう打つ手なしです」
 「確かにみどりはともかくまな板が売りのショーは」
 「骨抜きですね・・・みどりにしても40代ですからね、本人も潮時と考えているようですよ」
 「支配人さんも?」
 「そうですね、骨抜きのショーをだらだらと続けるつもりはありません、商売としても成り立ちそうにありませんし、残念ですがそれまででしょうね」
 「ストリップを見に来ている客に対して公然猥褻というのはもう・・・」
 「ええ、お話になりません、どこに問題があるんでしょうね・・・美人ダンサーを集めて思い切りショーアップしたショーをできるところしか生き残れないですよ」
 「こちらのショーなんですが・・・」
 「お気に召しましたか?」
 「はい、日本一だと」
 「ははは、光栄ですがそれは持ち上げすぎでしょう」
 「いえ、私は風俗を求めて日本中を駆け回ってます、まあ、私の原点だという贔屓目もないとは言えませんが」
 「それでも充分に光栄です」
 「ここのショーなんですが、踊り子の個性を実に生かしていると思うんです」
 「それは心がけています、それが生命線だと思っています」
 「そこなんです、個性が生きているから色々と想像するんです」
 「と言いますと?」
 「この踊り子さんはどういう理由で踊り子になったのか、どんな気持ちで演じているのかとか」
 「なるほど」
 「勝手に頭の中でストーリーを作っちゃうんですね、それに沿って見るから感情移入しちゃうんです、そうするとよりエロティックになる」
 「さすがにペンで身を立てている方ですね」
 身を立てている、と言われると少し面映い、雑文を書き散らすことで食っていることには違いないが・・・。
 「そこまで考えてショーを作っていたわけでもありませんが、なるほど、感情移入して見ていただければ尚更エロティックになるでしょうね」
 「それで・・・踊り子さんたちにインタビューしてその内面を書いてみたいんです」
 「面白いですね、雑誌に掲載を?」
 「それはまだわかりません、もちろん書いたものは編集長に見せますが、採用されるかどうかは・・・」
 「いや、それでもいいです、採用されなくてもウチのロビーには張り出しましょう、掲載された雑誌の切抜きならなお良いですが・・・ただ、話したくない娘もいるでしょうから・・・」
 「それはもちろんです、ただインタビューしたいと申し入れる許可だけいただければ」
 「私から皆に話しておきましょう、頑張っていい記事にしてください」

 こうして俺が一介の雑誌記者からフリーのライターになれるきっかけになった取材が始まった。


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