投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

笛の音
【父娘相姦 官能小説】

笛の音の最初へ 笛の音 7 笛の音 9 笛の音の最後へ

笛の音 1.-8

 どうしよう。場を取り持つ役割を担う筈の後輩が身勝手にも立ち去ってしまった。断ることしか考えていなかった有紗は、こういった状況になって何を話していいか分からなかった。
「あ、あの……」
「ひっ」
 声もカッコいい。それにひきかえ自分は普段よりも霞れて頓狂な声で肩を跳ねさせてしまった。自分の地声が恥ずかしくて嫌になってくる。
 しかし相手は中学生だ。こっちは高校生。大人から見たら何でも無い年齢差だが、その当時を過ごす有紗たちにとっては隔絶した立場の差があった。声を出すのは恥ずかしいが、ナメられてはいけない、と訳のわからない強迫が有紗に起こってきて、
「……なに?」
 と、あまりにも不自然に、唐突にテーブルに肘をつくと、髪の中に指を入れて項あたりを弄った。
「ず、ずっと見てました」
「あ、うん……。どこで?」
「駅のホーム……。俺、駅前の塾に行ってて、い、いつもセンパイが電車待ってるの窓から見てました」
 そんな視線に気づくわけない、さっさと私の視界に出てきてくれればよかったのに、と直樹に理不尽な怒りを覚えていると、
「……付き合ってください」
 突如聞こえてきた。それを言いに来たのだろうから言われて当然の言葉だったが、聞いた瞬間、貫通するような痛みが胸を襲った。ズギュン、人に言ったら馬鹿にされて嗤われるだろう。告白されに来られて、こっちが一目惚れするなんて格好悪すぎる。
「あ、……、そ、そうなんだ。そうしたい?」
 全く意味の為さない返事を返した有紗へ、告白の返事を待つ緊張に、強張りを強めている直樹が、はい、と言った。
「ま、ま……、い、……いいけど」
 マンガに出てきた『素直じゃないキャラ』受け売りのセリフを、マンガの中に比べたらどうしようもなく不体裁に吐いて、有紗は直樹と付き合うことになった。
 一目見た瞬間に年下の子の顔が好きになってしまいました、相手がどんな子なのか全く知らないのに。最初有紗は頭の弱い女子高生そのまんまだという自己嫌悪に駆られていたが、高校が終わって、本屋やショップビルで時間を潰し、塾が終わった直樹と待ち合わせて家に帰る、その間に色々な話をして直樹を知り、何を聞いても自分に合わない資質が出てこないから、彼のことをよく知るうちにますます惹かれていくようになった。
 しかし二ヶ月以上経っても、直樹は手一つ繋いでこない。夏休みになってただでさえ会い辛いのに、出かけようとも言ってこない。ビビらせてしまっているのかもしれない。体面上は、自分が年上、という意識が強く、年下を相手にする時の態度は妹に慣れてしまっているものだからお姉さんぶったものになってしまって、何故もっと可愛らしく振る舞えないんだろう、直樹が嫌がってしまわないかと不安が募ってきた。
 自分から連絡を取って外出に誘うのは躊躇われた。休みに入っても塾の夏期講習に行っているし、何といっても直樹は今年高校受験だ。ウザいと思われるのが怖かったし、邪魔をしたくはなかった。家では妹のために母親代わりとして気丈に振舞っている有紗だったが、一人になって夜空を見上げて直樹のことを考えると涙が出てきそうになるという、後から考えれば失笑してしまうような、しかし思春期真っ只中にあっては極めて深刻な状態になって、もう無理だと爆発しそうになったちょうどその時に携帯が鳴った。公衆電話、と表示されている。直樹も親に携帯を持たされていたが、発着信履歴をたまに見られるらしく、有紗に連絡を取るときはいつも、既に当時から台数がかなり少なくなっていた公衆電話を探してかけてきていた。
「――花火?」
「うん、こんど那珂湊でやるんだ。……行かない?」
「行く」
 隠すつもりはなかったが敢えて言うのも憚られて、父親と妹にはまだ直樹のことを話していなかった。海沿いで行われる花火大会に友達だけでどうやって行くんだと父親に訝しまれたが、友達のお姉ちゃんが車を出してくれるからと嘘をついてしまった。
 当日、待っていた直樹の前に有紗は浴衣で現れた。夏休みに直樹とどこかに行きたいと強く思っていたから、仲を取り持ってくれた後輩に聞くと浴衣を持っていると言うので借りたものだった。コソコソと二人を逢わせるのを後輩は楽しんでいるようで、合わせてみたら自分の浴衣だと有紗には丈が短かかったから、急遽祖母に連絡を取って従姉妹のものを一式持って来させ、逢い引きなんて素敵ねぇ、と孫と一緒にはしゃぎ始めた祖母に着付けてもらった。借りた浴衣は女子高生が着るには大人っぽいデザインだったが、編みこんだ髪を捻って上げたヘアスタイルに変化した有紗にはよく似合っていた。
 だが浴衣姿を見るや絶句しているジーンズにTシャツの直樹を見て、有紗は我に返った。しまった、頑張り過ぎだ。直樹は引いてしまったかもしれない――。
「す、すごく、……かわいい」
 予想外の直樹の言葉が聞こえてきて、有紗は顔を伏せた。初めて褒められた赤面を見られるのが恥ずかしかったからだ。乗って、とタオルを何枚か畳んで括りつけてクッションになった自転車の後部を指され、俯いたまま有紗は横座りに座ると、急がなきゃと直樹が自転車を漕ぎ始める。わっ、とグラついて後ろに倒れそうになった有紗は、直樹の腰に掴まった。


笛の音の最初へ 笛の音 7 笛の音 9 笛の音の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前