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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 姿勢 〜-1

〜 姿勢 〜

 今日は新入生にとって記念すべき最初の一日だ。 合宿を終えて生まれ変わり、衣服を返上して学園の門をくぐり、入学式を経て晴れて学園の一員になる。 時には感情を分かち合い、時には競い合う、一緒に新しい生活を始めるクラスメイトと出会う。 長い時間をかけてメンタルを築く、
自分たちの運命を握る担任と顔をあわせる。 

 同じことが担任にも言える。 有体に言えば、担任は生徒の運命を握っているだけでなく、自分の運命を握られている。 もしも生徒が学園のカリキュラムを満たさなければ、生徒と同様に担任の学園生活も終わる。 だからこそ最初の一週間は、担任がほぼつきっきりで自分のリズムを教えることになっているのだが、新人担任の2号は違うらしい。 

 可愛らしい自分のクラスを、初日の午後から、8号教官たるわたしに預ける。 
 自分以外の『色』に生徒が染まれば、それはそれでややこしくなるというのに、変わった教官もあるものだ。 しかも、生徒は合計35人いるはずなのに、10人近く欠けている。 どうやら特別指導を受けている生徒もいるらしい。 自分一人で躾ける自信がないのか、わたしたち専任教員を信用しているのか知らないが、このあたりの呼吸は、おそらく新人であるがゆえに、よく分かっていないのだろう。

 少女たちの靴と首輪には『番号』が記してある。 22番を先頭に、25人の生徒がバラバラに並んでいる。 22番が早いモノ順の流れをつくり、それに他が乗っかった順番だ。 
 一週間後の身体測定で基礎体力を測定し、その順番が今後の体育実技の整列隊形になる。なのでまだ身体測定を終わらせていないうちは順番が決められず、このままでもいいのだが、それでは面白くない。 些細なことでも、生徒ではなくわたしが主導権を握っておく。

 ということで、生徒全員に『マスターベーションが好きな順に並びなさい』と告げてみた。 身長順でも番号順でもなく、答えのない順番だ。 
 『誰も動けず、22番が鞭で躾けられる』展開になるかと思ったら、22番本人が先頭に来た。 つられて他の生徒も後ろに並ぶ。 わたしの顔色を伺いながら、みんなして作り笑顔を張りつけて、30秒もしないうちに縦一列をつくるではないか。

 理不尽な状況にある場合、黙って待つのは三流だ。 『答えがない場合はとにかく動く』が学園における集団行動の大原則なわけで、計らずも原則に則った行動には少なからず驚いた。 試みに22番の後ろに並んだ9番に『マスターベーションはお好き?』と尋ねると、『ハイ! 時間が余ったらいつもマンズリしています! ありがとうございます!』と元気よく返す。 咄嗟の機転としては上出来で、新入生ということを考えると、かなり優秀な生徒といっていい。
 
 これなら、わたしとしても指導の甲斐がありそうだ。 わたしなりの優しさ、思い遣りを伝えたところで、クラスに受け入れる度量がなければ意味がない。 できるなら、関わった生徒には、学園で終わって欲しくない。 より過酷な道だとしても、次のステージにしか未来はない。

 ……余計なことを考えるのは止そう。 そろそろ指導に入った方がいい。 2号からは午後一杯裁量を預かっているとはいえ、諸々考え合わせると、わたしの持ち時間は3時間というところだ。

「それじゃ、基礎動作から説明しよっかな。 一度しか言わないからよく聞きなさいよ〜」

「「ハイ! ありがとうございます!」」

 返事の大きさは申し分ない。

「口は『いつでも半開き』よ。 アホっぽいくらいで丁度いいわ。 ていうかメスは全部アホなんだから、アホっぽいも何も当然なんだけどね。 それから、脇を締めて、足を揃えて、頭が風船に引っ張られる感じでスッと伸ばす。 これが『きをつけ』ね。 さ、やってみましょうか」

「「ハイ!!」」

 ざっ。 あちこちで姿勢が整う。 出来ていない生徒は、今のところいない。 
 返事の滑舌が多少落ちるのはやむを得ない。 

 口を開かせるのは、体育実技の基本だ。 全力疾走中だろうが危険な組み体操中だろうが、口はポカンと開けさせる。 人間は口許を引き締めることで凛々しさを出し、集中している者は決して口を明けっ放しにしない。 だからこそ、意識して口を開かせ、自分たちの『凛々しさをもつ資格すらない』立場を自覚させる。 
 最初は口を明けっ放しにする程度だが、そのうちレベルをあげて『常に舌で鼻を舐める』や『常にあかんべ』といった規制を取り入れることもある。 意図は同様で、生徒たちは真剣に間が抜けた姿を演出するうちに、本来の自分たちがあるべき立ち位置を理解するようになる。


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