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エスが続く
【OL/お姉さん 官能小説】

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4. Speak Low-26

「使ってほしい?」
「んぐっ……」ローターの表面に糸を引きながら口を話すと、ふるふると首を振って、「やだ……、翔ちゃんがいい」
「後でね」
 冷たく言って、平松はローターを持った手をスカートの中へ差し込んで来る。抗おうにも、脚の間を狭くはできても閉じ合わせて拒むことはできない。丸みがショーツの表面を撫で上げてくると、込める力も削がれていく。
「挿れてって言って」
「やだ……。オモチャじゃやだっ……」
 甘えて首を伸ばしてキスをしようとしたが、顔を引かれて、悦子は堪え切れない呻きを漏らした。
「これさせてくれなきゃ、もう今日やめるよ?」
「そんなイジワルしないでっ……」
 ローターで濡れ塗れたショーツの蜜を染み出させるように柔肉に何度も押し付けながら、平松は悦子の髪を避けた耳元で、
「俺がしたいって言ってるんだよ? 悦子」
 言われるや、物理的な拘束だけでなく、まるで全身に何かが幾重にも巻きつけられて絞られるような感覚に震えた悲鳴をあげて、
「い、挿れてください」
 と口走ると同時にショーツの縁からローターが悦子の中にヌルリと押し込められてきた。蜜に濡れそぼる壁がローターの丸みに開かれて、しかしすぐに手が抜かれる。平松はスカートを履いたまま開いた脚の間、その裾から伸びたコードの先のコントローラーを持ち、
「悦子」
 と呼んだ。焦らされている。あれだけ下着の上からだけの愛撫で身をギリギリまで焦燥に苛まさせたのに、まだ玩具で弄ぼうとしている。自分の体は平松の思いのままなんだと意識を痺れさせながら目線を向けた平松の顔はいつもよりも興奮に色濃くさせた淫虐が滲んでいた。
「はい……」
「ちょっと、出かけてくるね」
「……」
 何を言っているのかわからなかった。意識が薄れかかっているせいかと、気を確かにもう一度平松の言葉を咀嚼するにつけて、恐ろしさが悦子を震えさせてくる。歯がなりそうなほど身震いして首を何度も振った。
「ちょっと待ってて。ゴム買ってくる」
「や、やだっ……、何言ってんの? あ、あるよ、まだ」
 ベッドサイドのチェストの引き出しには、まだいくつか新しいコンドームが眠っている筈だ。
「足らないよ。……悦子をメチャクチャにしたいから、今日は」
 ではなぜ帰り道に店に寄って買ってくれなかったのか。平松がしようとしていることが恐ろしすぎて、何度も、お願い、と言って引きとめようとしている最中に、平松が手に持っていたコントローラーのダイヤルが回された。
「うあっ……!」
 スカートの中で振動が直接悦子の襞壁に送り込まれてきた。脚を閉じたくても閉じることができない。手で抑えたくても腰から動かすことができない。
「このまま待ってるんだよ、悦子」
「やだ……、いやっ! ……翔ちゃん、お願いっ……」
 無情にも立ち上がった平松にすがりつくこともできない。両手を後ろに縛られ、膝を立てて脚を開いたままの姿の悦子を見下ろした平松は、愛してるよ、といって傍を離れていく。
「待って! ……翔ちゃんっ!!」
 部屋の入口のところまで行った平松を首を巡らせて追った悦子は、彼が本気だということに愈々大きな声を上げて叫んだが、平松が壁のスイッチに手をかけて明かりを落とすと闇に包まれた部屋の中でシルエットしか見えなくなった。
「翔ちゃぁん……」
 脚の付け根を襲ってくる振動と、このまま一人置かれる恐怖に最後の声を振り絞ったが、平松は靴を履いて外に出て行ってしまった。カシャン、と鍵を掛けられる音が聞こえて後は、部屋の中はローターの震える小さな音しかしなくなる。
 自由が効かない。闇に目が慣れてきても、カーテン越しに入ってくる夜の明かりは悦子の周囲を殆ど照らしはしなかった。ローターはなおも悦子の内部へ振動を送り続けてくるが、決して本当にして欲しいほどの刺激は与えてくれない。かといって淫情を鎮めることもなく、ひたすら悦子をもどかしい状態に据え置いてくる。時計は見えない。一人で置かれる不安にずっと浸らされる。もしこの先に平松に捨てられた時の喪失感を闇が象徴していた。気が狂いそうになるほど怖い。しかしローターの刺激に淫らに火照っている。
 どれくらい時間が経ったのか分からないで、最早これが現か疑わしいほど朦朧となってきた悦子の耳に鍵が開けられる音が聞こえた。うなだれていた悦子は、その音に歓喜に身を包まれながらドアを向いた。靴を脱ぎ、廊下を渡ってくる足音が聞こえる。ドアがゆっくりと開いた。スイッチが入れられ、蛍光灯が瞬きながら再び灯った。
「あ……、あ……」
 平松の姿を見た瞬間、悦子の両目から涙がこぼれ落ちた。ビニール袋を提げた平松が近づいてきて悦子の側にしゃがむ。
「……しょ、翔ちゃん……」
 何度も鼻をすすり、嗚咽混じりに平松を呼んだ。
「いい子にして待ってた?」
「……こ、怖かった」
「怖い? ……どうして?」
 そんなこともわからないのか、と憤りの種は、平松が再び自分の前に現れた嬉しさの前に散消する。悦子は泣きじゃくりながら、
「も、戻ってくるかどうか、すごく不安だった……」
 と訴えると、平松は悦子の顔を覗き込み、じっと目を見つめてきた。
「戻ってこないわけ無いじゃん。……悦子が待ってるのに」
 嗜虐を浮かべた眼光は優しくはないのに悦子の心を抉って、思わず、
「あ、ありがとう……」
 と悦子に言わせた。


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