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エスが続く
【OL/お姉さん 官能小説】

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2. Sentimental Journey -25

「今日もたくさんしたい」
「うん……」
 鏡の中の淫猥だが幸せな自分を見ているうちにたまらなくキスがしたくなって、悦子は実物の平松の方を向いて唇を合わせた。平松の両手が悦子の腰を上方に持ち上げてくる。これが再び勢い良く下ろされたら、絶頂に達することができるのは間違いなかった。
 だが平松は男茎の首だけ悦子に埋めたところまで体を引き上げると、そこから自分の体に向かって落としてくるのかと思ったら静かに悦子の中から抜いていった。
「帰ろう?」
「えっ……」
 まさかの行動に悦子は信じられない顔を平松に向けた。「だって……」
「チェックアウト、もうすぐだよ」
「やだっ、ちょっと……」
 悦子は身を翻して平松に抱きついて、「そんなのひどいっ……。やだっ、最後まで……」
「だめ。……帰ってからしよう? 悦子の部屋で」
 と言って平松が何も放出されていないコンドームを抜き取ってしまう。悦子は生身になった男茎を握って平松に縋りつきながら、
「待って、やだやだ、お願い……」
 と訴える。化粧をしていたときとは全く立場が逆になっていた。平松は悦子の髪を梳いて優しいキスをして、おあずけ、と言った。
 新幹線の中でも悦子は無言だった。土曜の昼間の新幹線は往路よりも空いていた。悦子は窓側に座りながら、脚を組み、肘掛けの両方を使って脱いだコートを下肢が冷えないように掛けた上に手を置いていた。隣の平松とは目を合わせないで高速で流れていく景色を見ていた。
 平松が途中でやめられて呆然としている悦子を宥め、急かして化粧と髪を整えさせるとチェックアウトには間に合った。性楽に痺れていた意識が化粧を整えているうちにはっきりしてきて、ラブホテルの外にでて外気に触れると、哀しみと怒りが混ざった気分になって悦子は何も言えなかった。淫乱な女だとは認めたくないが、絶頂の寸止めをされるなんてとんでもないと思った。ひどい男だ。好きと言ったのを取り消してやりたいとまで思ったが、一方で朝から甘美に痺れさせられた体は、とにもかくにも早く帰ろう、そして続きをしてもらおう、と悦子を諭してくる。
 なんだかなぁ。わたし、やっぱり頭おかしくなったんだ。
 悦子はこんな侮辱を受けながらも、まだ平松と手を繋いで歩いている自分に呆れた。コイツやりたい放題だ。なのにこの手を振り払うことはできないし、並んで歩いていたい。
「そこ、寄って」
 駅に向かう途中でコンビニがあった。
「なんで?」
 出発時に遜色ない華やいだメイクでより一層見る者を怯ませそうな顔立ちで睨んでやっても平松は平然としていた。誰かさんがパンスト破いたからだろっ、声に出して言いそうになったが、ラブホテル街から出てきた女が大きな声で言えば通りがかりの人の視線を集めるに違いない。
 ――更に言えば、昨日平松の前で失禁をさせられた下着をもう一度履くことはできなかった。たった一枚の薄布だが、スカートの中にそれを履いているか否かでは感覚として雲泥の差があった。地面から悦子の秘部を遮る物が何もないと思うと、コートもミニ丈のスカートも恐ろしく心もとない。ショーツをコンビニで扱っているのを見たことがある。買うのは猛烈に恥ずかしいが、ここが異界である大阪であることが唯一の救いだ。
「早く帰ろうよ」
「バッ……、ちょっ、……ええ!?」
 平松が手を引いてコンビニの前を素通りする。下着とパンストを買うから待て、と言いたいが、土曜の街中なのに周囲に人が多い。何より少し前を歩く平松の表情は口元に少し笑みを湛えていて、悦子が何を買おうとしているのか明らかに分かっているようだった。
「……変態。……ヘンタイのブタ野郎」
 下着無しで街中を歩かされる羞恥に叫びそうな衝動に駆られて、それを何とか抑えようと昨日愛を告白した相手に対して通常ならば出てこない呼称が出た。そう言っても平松は怒ることも悲しむこともなく笑った。
「そうやって強がってるのが……」
「可愛くないっ」
 平松が言う前に否定してやる。
「……いいじゃん。悦子の家に帰るだけなんだから、買ったらもったいない」
「もったいないとかそういう話じゃない」
「それに……」
 平松が握る手の力を強めて小声で言った。「……悦子がノーパンの方が興奮する」
 ギュ、じゃないよ、ギュじゃ。
 悦子は顔を赤らめながら、何故にここまでこの男の変態行為に素直に従っているのか、本当にスキモノになってしまったのではないのかと心危ぶんだが、そんな恥戯をはたらいておきながら、手を握る平松の温かみは確かに自分への恋慕を感じたから、それから何軒か見かけたコンビニを素通りしていった。
 もうすぐ名古屋だった。新大阪までの道のりと、新幹線の座席に座ってすぐまでは下着をつけていないことに動揺しっぱなしだったが、一時間もすると和らいできた。名古屋から新横浜までは一時間二十分くらい、そこから家への時間を考えると、あと二時間くらいかなと思ってハッとなった。いかんいかん、ノーパンでいることを何普通に受け入れようとしているんだ。


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