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〈熟肉の汁〉
【鬼畜 官能小説】

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〈熟肉の汁〉-2

『キャー!ちょっと素敵ぃ!』

『有紀ちゃんのパパさん、こんばんは〜!』


嗜むどころか、かなり酔っているママ友達は、周囲の迷惑も省みず、キャーキャーと騒ぎ散らしてはしゃいでいる。
ただ、恭子だけを除いて……。


『パパの車凄いでしょ〜?ほら、乗って乗ってぇ!』

「あ…うん……お邪魔します……」


恭子の酔いは覚めてしまっていた。
有紀がパパと呼ぶ男を、恭子は知っているからだ。


……有紀の夫の名前は弘樹と言う……恭子が中学生の時に恋い焦がれた同級生だ……。

恭子の中学校は、陸上部のトラックと野球場が隣り合わせになっていた。
陸上部だった恭子は、部活動の間、野球部の弘樹を何時も目で追っていた。
土埃に塗れ、声を張り上げて白球を追う弘樹の姿に、まだ小さかった胸は痛みを伴って爆ぜていたのだった。

結局、恭子は自分の想いを伝えられないまま中学校を卒業し、それから会えずじまいのまま月日は流れた。

耕二という男性と出会い、惹かれ合うままに結婚し、その数年後に彩矢が産まれ、慎ましくも幸せな日々を送ってきていた。
そして、彩矢が幼稚園に通うようになり、ある程度自分の時間が持てるようになった初夏のある日、バッタリと懐かしの想い人と再会を果たした……。


今の暮らしに不満など無かった。

ただ、逞しく成長し、大人の男性としての魅力を備えた曾ての“恋人”に、心があの時の中学校時代の少女に戻ってしまっただけなのだ。


弘樹は優しく接してくれた……ベッドの中では何度も恭子の美貌を褒め称え、頭を撫でては唇を重ね、そして宝物のようにそっと扱い、解きほぐすように全身を舐めてくれる……愛されているという実感が心身に染み渡るたびに、恭子は脳髄まで痺れるような快感を覚えていたのだ……。


『着いたわよ〜。じゃあまた…彩矢ちゃんとパパさんに宜しく〜』


気が付くと、そこは恭子が住んでいるアパートの前だった。
コの字に並ぶアパートの前には、道路を挟んで畑があり、作物の枝葉が風に揺られてザワザワと騒いでいた。


「うん……送ってくれてありがとう……」


車内で恭子は弘樹に声を掛けなかった。

妻子が居るとは聞いていたが、まさかママ友の有紀だとは夢にも思わなかった。

不倫という禁断の遊戯に足を踏み入れておきながら、しかし、それが仲良しな友達だと知ったショックに、足元はフラフラと落ち着かず、歪んだ視界の中に自分の部屋を見つけると、インターホンを押して帰宅を告げ、鍵を取り出してドアを開けると、階段を上って部屋の扉を開けた。



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