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鮑売り
【その他 官能小説】

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鮑売り-6

(6)


 愛だとか、情念だとか、心を紡ぎ合うことなどとは無縁の肉欲がある。男ならば性の捌け口として女を買ったり、好きでもない相手の体だけを求めて欲望を差し込んで打ちつけることもある。どんなに体が燃えても感情は揺らがない。迸ったあと、横たわった女への関心はまったく消え去って、時には自己嫌悪に陥ることさえある。
「まだ時間あるわ」
誘う女に背を向けて顔も見たくない。

 おばさんへの想い……。それは肉欲だけだったのか。母親よりずっと年上の初老の女に熱い想いはあったのか?心身ともに彼女を求めていたのだとしたら尋常ではなかっただろう。
 ぼくの裡には古い刺激と記憶が鬱屈したまま澱となってひっそり沈み込んでいたのかもしれない。
 思えば中学生の頃、初めて女体として意識したのはおばさんの『体』だった。その後の男たちとのあからさまなセックスの衝撃はオナニーを何度こなしても満たされるものではなかったのだ。いつか水槽の鮑はおばさんの権化となってぼくの心に寄生していたのかもしれない。……

 おばさんはどうだったのだろう。
日が暮れてやってきたおばさんはまるで酔ったみたいにふらついていた。
「あんた、ほんとに一人?」
同じ事を言い、
「ほんとは、何しにきたの?」
「だから、おばさんに会いたくて一人できたんだ」
「ほんとなんだね……」
「はい……」
「鮑の好きな英樹ちゃんだな?大人になったんだな」
おばさんはぼくを求めるように両手を差し伸べて、
「もう誰も鮑買ってくんねえんだ。信男も嫁もらって、もう来てくんねえんだ」
ぼくに抱きついて泣き出した。

「おばさん」
触れた背中の肉付きを掴むように引き寄せるとそのままぼくにしがみついてきた。
「鮑、さばいてくれ、さばいてくれ」
体を振って乳房を押しつけながら、ぼくの股間をまさぐってくる。
「これで刺してくれ。奥まで刺してくれ」
崩れるように倒れ込んだおばさんはスカートをたくしあげた。眩いばかりの金色のパンツが食い込んだぶよぶよの股間があらわになった。

 腹はたるみ、脂肪を蓄えた太ももや尻の肉は垂れさがって醜いばかりの様相である。その肉塊にめり込んだ輝くパンツは、
(まるで似合っていない)
どころではなく、異様であった。
 しかしぼくの欲情は萎えることはなかった。むしろ新たな昂奮に突き上げられていた。体形にも年齢にもそぐわない趣味の悪い金色のパンツ。ふだん穿いているとは思えない。彼女にとって精一杯の表現だったのではないか?ぼくという『若い男』に対しての……。(穿き古したものではない)
新品だ。温泉街にはコンパニオンが出入りする洋品店もある。そこへ走って行くおばさんが浮かんだ。

 金糸の生地は薄く、溢れた淫液が秘唇の形に染みてどす黒い陰唇がぼんやり霞む。その色合いがグロテスクで生々しかった。

 締め付けているように見えたパンツは呆気なく剝がれ、股に備わった秘貝が剥き出しになった。 
(鮑だ……)
黒ずんだ肉厚の陰唇は爛れたように盛り上がり、ぬめりに塗れて黒光りして、肌にへばりついた生き物の様相であった。
(醜い……)
瞬時に付き合っている女の女陰のピンク色の秘肉が浮かび、それと比して美しさの微塵もない裂け目に毒々しささえ感じた。とても口をつける気にはならない。が、ぼくはその亀裂に異常な昂奮を覚えていた。男を咥え込む、おののく肉体が満たされるためだけに穴を晒し、心の隙間を埋めようともがく執念のような叫びを感じたのだった。

 おばさんは自ら膝を抱えて紅い扉を開いて身構えている。息も絶え絶えの呼吸で口は開けたまま、目は見開いて天井を見つめていた。
「見てくれ、見てくれ」
(見てますよ!おばさん!)

 重なったとたん、
(食い付かれた)
蠢きに捉えられた感覚にぼくは耐えられず、
「うう!」
打ちつけて一気に放射した。
「おばさん!」
「ぐぐぐぐぅ……」
念仏のような唸り声がぼくの耳に響いた。

 引き抜くと同時に裂かれた鮑は生クリームを吐き出して白いとろみに濡れた。呆気ない束の間の『さばき』であった。

 おばさんの微笑みが見上げていた。
「ありがとね……」
「おばさん……」
「こんな婆さん、いやだったろう?」
ぼくは言葉が出なかった。
「三年ぶりに、鮑、売れた……」

「英樹ちゃん……」
ゆっくりシャツをたくし上げて豊満な乳房を見せた。
「もう見たくないか?」
「?……」
「中学の頃か、英樹ちゃん、オッパイ見てたよね?」
「……」
「そういう年頃だったんだな。見せてやりたかったけど、そうもいかないし……弱ったもんだ……」
(知っていたのか……)
「おばさん」
ぼくは重みで垂れ下がった乳房に記憶の昂奮を重ねて顔を埋めていった。

「ああ、おばさん」
「英樹ちゃん、好きなだけ吸ってくれ、吸ってくれ」
おばさんはさまようように首を振ってのけ反っていく。その手はぼくの頭を掻き抱き、胸を揺さぶって押しつけてくる。谷間に顔を埋め掌に余る膨らみをぼくは貪った。
オッパイだ。あの時のオッパイだ。
「英樹ちゃん!」
「ううう!」

(ぼくもおばさんも時間を遡っている!)
そうでなければその時の昂奮は説明がつかない。
 いつの間にか復活したペニスがぬるっと貫いた。
「ああ、鮑……」
思わず口走っていた。
「英樹ちゃん、秘密だぞ、秘密だぞ」
歓喜の表情に歪みまがらおばさんの目尻には一筋涙が伝っていた。
秘密だ、秘密だ。
(海底に潜んでいた鮑はぼくを待っていた)
記憶と現実がないまぜになって支離滅裂になったぼくは息苦しいほどの陶酔に見舞われていた。


 


  
 


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