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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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B-4

「湊、田辺にキレたんだって?」
勤務終わりにレジの締めを終えた佐伯が笑いながら言った。
田辺とは、田辺未央の事だ。
休憩室の丸椅子に座り、その日の売り上げを打ち込んでいる。
「しゃーないっすよ、あんな事言われちゃ…頭きました」
「未央はうちのエースだからな。…ホールの。顔も愛想も良いし、この店の事を把握してる。客には嬉しい人材だろ。あいつはやってけるよ、ホールでもキッチンでも…」
「キッチン?」
「あぁ。なかなかの腕よ」
佐伯はニヤッと笑って湊の背中をポンポンと叩いた。
…あんなバイトなんかに抜かされてたまるか。
なんとなくそう思った。
彼女はまだキッチンなんてやっていないけど、漠然とした不安に駆られた。

家に到着したのは深夜3時過ぎ。
明日も9時出勤だ。
開店は11時だが、仕込みやその他もろもろ仕事がある。
最近、そんなペースで仕事をしている。
帰ってから風呂に入り、ここのところ一杯ひっかけてから寝るのが日課になってしまった。
今日もまた、生乾きの頭にバスタオルを被せ、冷蔵庫からコロナの瓶を取り出す。
蓋を開け、半分まで一気に飲み干しドサリとソファーに座る。
部屋が散らかっている。

次の休日はいつなんだろうか。

湊はテレビのリモコンを手に取りつまらない深夜番組に意味もなく目を向けた。
ゲラゲラと笑う売れないお笑い芸人。
テレビに出れているだけマシか。


気付いたら眠っていた。
テーブルの上の空き瓶を一瞥し、くしゃみする。
なんだか寒気がする。
5月と言えど、夜は冷えるものだ。
寝冷えしたかな…と思いながら時計を見ると8:50。
湊は愕然としそのまま昨日着ていた服とマウンテンパーカーを引っ掴み、家を飛び出した。

「おはざいまーす!すんません!寝坊しました!」
キッチンにいるであろう佐伯に声を掛けると、「おはよー」と呑気な声が返ってきた。
すぐさま休憩室へ向かい、仕事着に着替える。
昨日着ていた物なので、サロンやワイシャツにソースが飛び散っている。
が、今はそんなのどうでもいい。
湊は帽子を被り、キッチンへと向かった。
寝癖がひどかったので、帽子っていいな、とこの時ばかりはひしひしとありがたみを感じる。
「すんません。……どこまで終わってます?」
息を切らしながらそう言うと、佐伯は「そこのスープ作っといて。ランチ用のやつ」と言った。
言われるがままコンロの近くに立ち、煮えたぎったお湯の中にコンソメを入れる。
「おはよーございまーす!」
30分くらい経った頃、ランチから入っているバイトの人達が出勤してきた。
開店30分前からホールの立ち上げをしてくれるのだ。
「おはよー五十嵐」
そう言って出勤してきたのは同い年の松谷有希だ。
松谷は自分を同い年と知ってからタメ口で話してくる、敬う心のないなんとも失礼な奴だ。
「おはよーございますだろーが」
「朝からかたいよー!張り切っていきましょー!」
あーだるいこの女。
湊はそう思いながら鍋に卵を投入した。
ホールの準備も終わり、間もなく開店となる。
今日は日曜日だから、忙しくなりそうだ。


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